よしのや
府中市の多摩川競艇場は場内売店の「牛炊(ぎゅうすい)」が名物として有名だ。「牛炊」は牛肉雑炊の略で、B級らしさと上品な味わいが高次元で融合した絶品でとても美味く、ぜひ一度食べていただきたい。しかし牛炊は焼きそばではないので今回は場外の店をご紹介。
多摩川競艇場の正門から西武多摩川線の駅に掛けての沿道には、その道の先輩方を相手にした呑み屋が軒を連ねている。場内で牛炊を食べ、運試しに船券を1000円分購入して運が無いことを再確認した後、それらの店で飲もうと足を向けてみた。どの店も鉄火場独特の雰囲気を醸している中で選んだのは、最も競艇場に近く活気もありそうな「よしのや」というお店。
ホッピーの幟とおでん鍋を横目に暖簾を潜ると、店内はちょっと意外なほどに広かった。左手に厨房がありその前がカウンターで10脚ほど椅子がある。右手はテーブル席が奥までずらっと6卓ほど。左手奥には小上がり席もあるようだ。
テーブル席は先輩方であらかた埋まっており、全員漏れなく出走表と鉛筆を手にしてTVの実況を眺めていた。テーブルごとに2・3人固まってレースの行方を見守っている。
壁に貼られているメニューを見る限り、焼き物・揚げ物・煮物から食事まで品揃えはバラエティに富んでいる。ガラスケースには刺身の類も納められていて、酒肴は一品2・300円から500円程度、カレーや定食は600~800円程度のお手頃価格だ。
厨房では店主夫妻、ホールは手伝いの女性が一人。とりあえず空いていた手近なテーブルに腰掛ける。
「いらっしゃい、なんにします?」
「ホッピー(450円)とおでん(500円)を」
「おでんは何がいいですか?」
「おまかせで」
焼酎の入った中ジョッキとホッピー、それからおでんの盛り合わせがやってきた。調布の工場が近いこともあってか他の客もホッピーが多い。隣のおっちゃんは大ジョッキ・氷無しで飲んでるが三冷もできるのだろうか? おでんは500円の割りにボリュームがあった。
おでんをつまんでグビグビ呑みながら店内を観察してると、先輩方の一人がやってきて何か紙をくれた。
「はい、これ」
「ん?」
「明日の出走表」
「あ、ありがとうございます」
どうやら船券を購入するついでに大量に競艇場から持ってきたものらしい。店内の客全員に配り、全員が当たり前のように受け取っている。うーむ、全員が常連で顔見知りなのか。こういうコミュニティもあるんだなぁ、と妙に感心してしまった。
ナカ(250円)をお代わりして、おでんを食べ終わってから焼きそば(400円)を注文。別にこの店の名物という訳ではないだろうが、どんな品が出てくるのか興味があったのだ。中華鍋で調理され、やや深みのある皿に盛られて運ばれてきた。
麺は中細でやや腰がある。具はキャベツ、モヤシ、人参と野菜のみで、青海苔と紅生姜が少々。モヤシの髭根と芽は処理され、どの野菜もシャキシャキとした歯応えが残っているが旨味がある。円やかなソース味で家庭的な味わいだ。野菜たっぷりで、かなり良心的な値段設定だと思う。
焼きそばを食べ終わる頃、この日のメインレースが丁度終わった。客が我も我もと帰ってゆく。良いタイミングなので私もお会計。
他の客はキャッシュ・オン・デリバリーで支払っていたが、私は特に言われず最後にまとめて会計された。どうやら常連は船券を買いに頻繁に外に出るので都度精算にしてるようだ。なんというか、こういう場所は独特な文化が形成されていて面白い。機会があればまたそっと端の方にお邪魔させていただこうと思う。
店舗情報 | 住所: 東京都府中市小柳町4-5-7 TEL: 042-369-1488 営業日時: 不明 ※恐らく多摩川競艇の開催日に順ずる |
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主なメニュー | 焼きそば 400円 おでん 500円 ビーフカレー 600円 煮込定食 850円 煮込み 500円 イカ焼き 500円 天ぷら 400円 うなぎ 400円 あじフライ 400円 煮魚 400円 下足焼き 300円 お浸し 250円 納豆 200円 ホッピー 450円、中お代わり 250円 |
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