宝味八萬
神田の「味坊」を始め、「老酒舗」「香辣里」などガチ中華好きに注目される飲食店を都内に展開する味坊集団をご存知だろうか? 「味坊」は以前、当ブログで紹介済みだし、「老酒舗」は個人的に訪問済みだったりする。
その味坊集団が、9月末に手作り点心の専門店をオープンした。屋号は宝味八萬、場所は小田急線の代々木八幡駅の真ン前だ。変わった焼きそばも提供していると知り、早速訪問してみた。
訪れたのは11月下旬、金曜の夜。20時すぎに二人で入店。人気店なので満席を覚悟していたが、ラッキーなことにすぐ着席できた。
店内は奥に長い造りだ。左側が厨房で、点心師の方が餃子や焼売を黙々と手作りされていた。店頭にはテイクアウト用の窓口もあり、そこで注文する客も多かった。
着席して「菜單」(メニュー)を確認。全て漢字で読み仮名すら振られていない。新型コロナ対策の衝立に、料理写真と日本語の説明が書かれているが、メニュー全体のごく一部だ。漢字でだけでは分からない方はこちらの記事で予習していくと良いだろう。
味坊というと東北料理のイメージが強いが、このメニューから広東料理に対してもガチで取り組もうとする心意気が伝わってくる。いろいろ食べてみたいので、飲み物の他に五品くらい注文してしまった。
まずは生ビール(プレモル香るエール/600円)と茉莉花茶(ジャスミン茶/800円)のホットで乾杯。ボトルワインもこの店の名物の一つだが、この日は飲みが目的ではないので止めておいた。
最初に運ばれてきたのは、豉油皇炒麺(香港風醤油焼きそば/900円)。今回の私のお目当てがいきなり登場した。数日前にTwitterで見かけたこれが食べたくなり、連れを誘い、おっとり刀でやってきたわけである。
見ての通り、具なしの焼きそばだ。薬味として長ネギと刻み生姜が添えられている。麺は香港で「幼麵(ヤウミン)」と呼ばれる細麺だ。独特なコシがあり歯切れが良い。この店では味坊工場の自家製麺を使っているらしい。味付けは、中国の醤油(生抽)やたまり醤油(老抽)、糖分・各種エキスなどをブレンドした「豉油皇」がベースだ。
一般的な豉油皇炒麺は黄ニラやモヤシが具として使われるが、この店はあえて具なしにして、麺自体の美味しさを際立たせている。さらにオイスターソースだろうか、幾重もの旨味やスパイスの香り・風味も相まって、箸が止まらない美味しさに仕上がっている。
具なしや具が極端に少ない焼きそばは、これまでも何度か食べてきた。”油で調理した麺とソース(味付け)だけで、ここまで美味しくできるのか!” 食べるたびにそんな驚きを抱き、「焼きそばの本質とは?」のような考えに耽ってしまう。晩秋の夜長にはピッタリな品だ。
食べ始めは味付けをややしょっぱく感じたが、薬味を加えるとそれがほどよく和らぐ。うまいうまいと食べていたら、あっという間になくなってしまい、物足りないほど。お代わりしようか迷ったが、他にもいろいろ食べたいので今日は我慢しておいた。
焼きそばに続いて、注文した品が続々と届いた。品数が多いので、淡々と説明していこう。
海鮮焼売(海鮮シューマイ/680円)。この店の人気点心の一つ。天辺にカニ味噌を乗せて蒸してあり、海老や干し椎茸の旨味がギュッと詰まっている。
五目上素春巻(五目野菜春巻/680円)。サクサクの皮に甘めの野菜餡。一般的な春巻に比べると、餡の水分が少なめかな。味付けされているので、そのまま食べるのが良い。
白灼時菜(季節野菜の温野菜/800円)。温野菜というから炒めずに蒸しているのだろう。野菜は小松菜か? ターサイか? 醤油ベースだが独特な風味の味付けでやや甘め。この店では貴重な野菜主体の料理である。
広東叉焼(広東風チャーシュー/1000円)。日本のラーメン屋が提供するような煮豚ではなく、時間を掛けてローストした本来のチャーシューだ。脂身の多い部位で、まさに広東料理の真骨頂。これを嫌いな人、いるのかな。
密汁叉焼酥(チャーシューあん入りのパイ/680円)。上述のチャーシューを餡に使った小ぶりなパイだ。サクサクした甘い生地が思った以上に合う。
最初に注文した品々をあらかた平らげた辺りで、ドリンクお代わり。紹興酒は品切れだそうなので、萬柑サワー(700円)なるサワーを飲んでみた。甘酸っぱくて美味しい。
この辺で箸休めにさっぱりしたものを、ということで凉拌黄瓜(キュウリの和え物/600円)。塩とニンニクで和えたシンプルな品を想像していたが、なにやら複雑な旨味を感じる。仕事が細やかだ。
腊肉排骨飯(豚スペアリブの蒸しご飯/900円)。骨ごとぶつ切りにした豚バラ肉と下味を付けて乾燥させた干し肉、豆鼓を御飯に乗せて蒸し上げた品だ。
スペアリブは一切れずつ前歯で咥え、骨から肉を刮げ落としながら食べる。少し面倒だが、この野趣が良い。脂身がとろけて口の中でほぐれる。豆鼓の塩っ気と風味、肉の旨味が滲みた米も味わい深い。
最後は小籠包(680円)。おなじみの定番も、もちろん点心師の手作りだ。レンゲにのせて慎重に穴をあけ、汁気をこぼさないよう啜ってから頬張る。安心感の溢れる味に、頬が緩む。
お会計は二人で9,000円ちょっと。なかなか食べられない品ばかりで、遠慮なくあれこれ注文してしまったが、後悔はない。むしろ、まだまだ他にも食べてみたかった。近いうちに再訪しなきゃだな。
店舗情報 | 住所 : 東京都渋谷区富ヶ谷1-53-4 リコービル 1F 営業時間: 11:30~15:00, 17:00~23:00 定休日: なし → ホームページ |
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主なメニュー | 豉油皇炒麺(香港風醤油焼きそば)900円 海鮮焼売(海鮮シューマイ)680円 小籠包(680円) 五目上素春巻(五目野菜春巻)680円 広東叉焼(広東風チャーシュー)1000円 密汁叉焼酥(チャーシューあん入りのパイ)680円 腊肉排骨飯(豚スペアリブの蒸しご飯)900円 白灼時菜(季節野菜の温野菜)800円 凉拌黄瓜(キュウリの和え物)600円 |
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