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そうめん そそそ

最近、東京にそうめん専門店が何件か姿を見せ始めた。東中野の「阿波や壱兆」。大井町の「そうめん屋はやし」。そして約一年前にオープンした恵比寿の「そうめん そそそ」。焼きそば以上にニッチなジャンルに私の好奇心も刺激される。先日、恵比寿でのメシコレ新年会の帰り道、ラーメン評論家の山本剛志さん、中国地方菜を偏愛する愛吃(あいちー)さん、二人の麺好きをお誘いして「そそそ」に寄り道してみた。

恵比寿 そうめん専門店 そそそ

店舗は間口が狭く奥に長い造りだ。1階はカウンターのみだけど、2階にはテーブルもある。夜はお酒が主体になるのか、お通しとしてヒジキと大豆の煮物が出た。ただ、3人ともすでにだいぶ飲んでいたのでお酒はなし。食べ物のみ注文することにした。

そうめん そそそ メニュー

メニューには色とりどりのそうめんが、ズラーッと並んでいる。つゆにつけて食べたる「つけそうめん」や、温かい出汁に浸った「にゅうめん」などの基本そうめんに始まって、明太クリームやカレー、ジェノベーゼなどの創作系も充実している。

そうめん料理メニュー

酒肴のページには、オリジナルのそうめん料理もあった。目的の炒めたそうめん、「鮭いくらちゃんぷるそうめん」はこちらに載っている。山本さん・愛吃さんと相談して、その「ちゃんぷるそうめん」と「納豆高菜そうめん春巻」、「ふわふわ釜玉そうめん」を注文した。

納豆高菜そうめん春巻 650円

最初に運ばれてきたのは「納豆高菜そうめん春巻」(650円)。春雨の代わりにそうめんを入れた春巻だ。納豆の香りと高菜の味わいが強く、そうめんならではの利点がわかりにくいが、美味しい組み合わせなのは間違いない。サクッとしたクリスピーな生地は、この店自慢のクラフトビールにも合いそうだ。

鮭いくらちゃんぷるそうめん 1480円

続いて「鮭いくらちゃんぷるそうめん」(1480円)。使われているのは小豆島の手延べそうめん「島の光」。favyの記事によれば「日本で唯一ごま油を使用して練った希少性の高い麺」とのこと。モヤシ・ニラと炒めてあり、トッピングにいくらとゴマ。そして鮭の切り身もゴロゴロ入っている。

鮭といくらの塩気・旨味が効いてる

そうめん自体の味付けは薄めだが、鮭といくらの塩気・旨味が効いてて、そうめんともマッチしている。そうめんの食味が軽いので、やはり食事よりはつまみだろう。1480円という価格はちょと高く感じるかも知れないが、東京カレンダーの記事によれば「数人でシェアして食べられるようにと考えられた」そうだ。それならば価格としては妥当だと思う。

ふわふわ釜玉そうめん 650円

そして最後に「ふわふわ釜玉そうめん」(650円)。この店の一番人気で、麦わら帽子を裏返したような、縁が広くて中央が深い特徴的な器に盛り付けられて運ばれてきた。茹であげて冷水で締めたそうめんには、メレンゲと卵黄、九条ネギと花鰹がトッピングされている。

山本剛志さんがよーく混ぜてくれます

そこに小豆島・金両醤油のだし醤油を掛けて、山本剛志さんがよーく混ぜてくれた。それを覗き込む愛吃さん。各ジャンルの第一人者と考えると、かなり贅沢な絵かも知れない。二人それぞれ好きなだけ取り分けて、残った分をいただいた。細い麺に出汁がよーく絡んでいる。滑らかな食感と柔らかい味わいで実に美味い。他の味もいろいろ試してみたくなる。

滑らかな食感と柔らかい味わい

話は変わるが日本の麺食文化はどのように始まったか、ご存知だろうか?

石毛直道『麺の文化史』によると、日本で初めて食べられた麺はそうめんの前身に当たる「索餅」あるいは「むぎなわ」だ。筆者の石毛氏は史料をもとに考察を重ねた上で、七世紀イコール飛鳥時代に伝来したのではないかと推論している。つまり蕎麦でもうどんでも、ましてやかん水を使った中華麺でもなく、そうめんが日本初の麺なのだ。

あえて私の空想をのべるならば、索餅が日本に伝えられたのは、古墳時代のことではなく、中国文明をさらに積極的に輸入することにつとめた時代となった七世紀である可能性がある。古代の日本への文明の伝播経路には大別してふたつのルートがある。朝鮮半島を経由して伝えられる文明と、中国の海岸部から東シナ海を直接横断して日本にもたらされる文明である。索餅は朝鮮半島を経由せず、中国との直接的交流で伝わった食品である可能性がある。朝鮮半島の歴史記録のなかに索餅はでてこないようだし、のちにのべるように、索餅と関係をもつと推定されるそうめんつくりの伝統を朝鮮半島は欠いているからである。(石毛直道『麺の文化史』108頁, 講談社学術文庫, 2006)

そして私があれこれ調べたところ、麺を炒めた料理もどうやらそうめんを炒めた料理が最も古そうだ。元禄十年(1697)に著された『和漢精進新料理抄』に、蒸し餃子「菜包(ツアイパウ)」やワンタン「片食(ヘンシイ)」と共に「麵(メン)」という料理が紹介されている。そこには「そうめんを茹でて洗い、熱した油で青菜と豆腐を炒め、そうめんを入れて醤油で味付けせよ」と書いてある。つまりそうめんと豆腐・青菜の炒めものだ。

1697_和漢精進料理新料理抄

【麵(メン)】 索麵(サウメン) 靑菜(アヲナ) 豆腐(トウフ)
索麪を。こわめにゆでゝ。よく洗置(アラヒオキ)。さて油を少しよくたゝせ。靑菜。豆腐等を。いりあげ。次に水を入(イレ)てよくたき立。右の索麪を入て。醤油にて味付也

明和9年(1772)『普茶料理抄』にも全く同じ内容が載っており、さらに天明二年(1782)『豆腐百珍』にも「菽乳麺(とうふめん)」という料理名で紹介されている。明治時代に炒麺(ヤキソバ)が伝来するずっと前の17世紀、江戸時代前期の元禄年間から、そうめんを炒めた料理が既に日本に存在したのだ。焼きそばからすれば大先輩のそうめん炒め。麺の選択肢として採用する機会が増えてくれたら面白かろうなあ。

店舗情報TEL: 03-6416-9284
住所: 東京都渋谷区恵比寿西1-4-1
営業時間: 11:30~15:00, 17:00~24:00
(金、土、祝前日は翌4:00まで)
定休日: 不定休
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主なメニュー鮭いくらちゃんぷるそうめん 1480円
ふわふわ釜玉そうめん 650円
納豆高菜そうめん春巻 650円