祐天寺 来々軒

2018年3月24日

焼きそばの歴史を辿ると、自然とラーメンの起源を辿る道と重なる。そして必ず通過するのが、1910年(明治43年)に浅草で創業した支那そば屋、来々軒だ。諸説あるが東京ラーメンの発祥店として知られている。

浅草の来々軒は三代目店主の出征に伴い、残念ながら太平洋戦争中に閉店した。しかし暖簾分けなどでその味は受け継がれている。そのひとつが祐天寺にある来々軒、今回紹介する中華料理店である。

昭和8年創業 祐天寺 来々軒

こちらのサイトによると、浅草来々軒で料理長をされていた傅興雷(フコウライ)という方が創業者。1933年(昭和8年)、大森に暖簾分け店を出し、翌年にここ祐天寺へ移転したらしい。現店主はそのお孫さんだとか。

祐天寺の来々軒を訪れたのは2月下旬の土曜日。駅から数分の位置に赤いファサードの店舗があった。「元祖東京ラーメン」「全国来々軒のルーツ」のポスターを横目に入店。

祐天寺 来々軒 店内の様子

フロアはなかなかの広さで、大小のテーブルが10卓ほど配置されている。土曜の昼下がりで8割くらいの客の入り。私のような一人客は最も広いテーブルへと促され、緩い感じの相席となる。

祐天寺 来々軒 メニュー

さて、メニュー。浅草来々軒は当初「支那そば、ワンタン、シウマイ」というシンプルな構成だったらしいが、こちらはさすがにかなりちゃんとした料理が並んでいる。焼きそばも6種ある。こちらと同じく浅草来々軒をルーツに持つ千葉の進来軒にもあんかけ焼きそばがあるから、浅草来々軒でも焼きそばを提供していた可能性は高そうだ。

瓶ビール 600円

注文したのは五目焼きそば(990円)、焼売(650円)、瓶ビール(600円)。ビールは浅草にちなんでアサヒを指定。

「焼きそばは柔らかい麺でよろしいですか?」
「はい」

注文から3分も経たずに焼きそばが運ばれてきた。早い。焼きそばの麺は茶色い蒸し麺。細麺で歯ごたえがあり、鍋肌で焼き付けてある。隣の人の汁麺も細いストレート麺だが色が全然違う。生麺の状態では同じ麺かも知れないが、茹でるか蒸すかで使い分けているのだな。

五目焼きそば 990円

餡はゴマ油が香るマイルドな醤油餡。具は豚肉、赤チャーシュー、エビ、干し椎茸、たけのこ、白菜、人参、青菜、うずらの卵。具だくさんで餡の水分はやや少なめ、粘度は普通。

具だくさんです

麺に具と餡を絡めて頬張る。カリッとした焼き目と蒸し麺ならではのもっちり歯応えに、それぞれの食材の芳醇な味わい、餡の風味が加わって、ひとくちひとくちが楽しい。当時そのままの味かどうかは知るよしも無いが、こりゃ文句なく美味しい。

焼いた麺が美味いんです

ちなみに同じテーブルで他に2人焼きそばを食べていたが、たまたまなのか二人とも女性で柔らかい麺だったのが面白い。中華の老舗で年齢高めの女性客を見かけた場合、あんかけ焼きそばを注文する率が高い気がする。もしかして汁麺より需要があるのかも知れない。

焼売 650円

焼売はだいぶ後からやってきた。蒸したてで熱々。肉がギュッと詰められ、天辺にエビがあしらってある。酢とカラシをつけて頬張ると、肉とエビの旨味で口の中が満たされた。すっかり餃子に主役を奪われた感があるが、なかなかどうして、ポテンシャルは相変わらずだ。

会計は2240円。はー、食べた食べた、満足満足。今度は仕事帰りにでも足を延ばして、元祖東京ラーメンと80年来の名物という揚げワンタンを食べてみたいなあ。

来々軒

店舗情報TEL: 03-3713-8811
住所: 東京都目黒区祐天寺2-3-13
営業時間: 11:30~14:30 17:00~22:00(土日祝は通し営業)
定休日: 火曜日
主なメニュー五目焼きそば 990円
焼売 650円
ラーメン 620円
揚げワンタン 820円
瓶ビール 600円