南粤美食(なんえつびしょく)

横浜中華街に南粤美食(なんえつびしょく)という広東料理(粤菜)の店がある。2016年6月に開業してまだ2年半だが、広東料理店の老舗が軒を連ねるあの区域で人気急上昇の注目店だ。

広東料理 南粤美食(なんえつびしょく)

南粤美食は現在の広東で実際に食べられている定番料理を中心に提供している。私が初回訪問時にいただいたのは「蝦籽撈麵(エビの卵の和えそば)」。極細麺に粉状のエビの卵をまぶした和え麺だ。メニューには載っておらず、空いているときのみ注文可能でお値段は1600円だった。

二度目の訪問でいただいたのは「煲仔飯(ボウチャイファン)」。ほぐした干し貝柱や自家製の干し肉・腸詰めとご飯を炊き込んだ土鍋飯だ。ランチでも人気の定番メニュー。どちらも未体験の味で広東料理の奥深さに唸ってしまった。

さて、2月といえば旧正月。中国で最も重要なイベント、春節だ。横浜中華街でも通りは華麗な飾り付けがなされ、様々な催しが企画されている。

春節の飾り付けがなされた中華街

その催しの一つが春節を迎える深夜のカウントダウン。一度見てみたいと、大晦日(除夕)に当る2月4日に南粤美食を4人で予約してみた。この日のコース(5000円・飲物別)を順に紹介していこう。

1. 前菜

五色併盤

五色併盤。干し肉・叉焼・ピータン・くらげ・キュウリのニンニク和え(蒜泥黄瓜)、冷菜5品の盛り合わせ。土鍋飯にも入っていた自家製干し肉(腊肉・臘肉・ラーロウ)がべらぼうに旨い。豚バラ肉を塩漬けにして店舗の屋上に吊るし、浜風に晒して作るそうだが、塩梅が絶妙なのだ。参加者の一人は気に入りすぎて1本600円を持ち帰りしてた。

2. 盐焗鸡

南粤塩焗鶏

南粤塩焗鶏。丸鶏の塩蒸し焼き。広東省東江の名物で当店一番人気。来るたびに必ず食べている。塩の滲みた身肉はもちろん、ムッチリした皮やコリコリした軟骨など部位ごとに食味の違いが楽しめる。半羽でもボリューム十分。骨の周りが旨いんだよなあ。

3. 広东汤

広東湯

広東湯。中国現地の料理に詳しい酒徒さんは広東省の省都・広州に住んで、「広州人の湯(スープ)に対するこだわり」に驚かされたという。広東料理を味わうなら、まずスープなのだ。こちらもパッと見はただの濁ったスープなのだが、肉などの乾物に加えて霊芝が入り、味わいがどこまでも奥深い。まさに滋味溢れる一碗だ。

4. 炒双鲜

炒双鮮

炒双鮮。ホタテとイカの炒め。まず西芹(セロリ)がつかわれている点が面白い。アメリカ中華では定番の食材だが本土に逆輸入された形になるのかな。ホタテとイカは軽く干してあるのか、歯応えがあって旨味が強い。新鮮で柔らかいことを売りにする店は多いけど、こう来るとは。

5. 干焼大虾

干焼大蝦

干焼大蝦。特大車エビのチリソース煮。広東料理でずっと攻めてくるかと思ったが四川が来た。単品だと一尾800円というまさに特大の車海老。その大きな身にかぶりつく。車海老の贅沢な味わいと、ほどよい甘辛の味付け具合に頬が緩む。

6. 云呑

香港海老雲呑

香港海老雲呑。丼にスープが満たされ、絹のようなツルンとした生地のワンタンが、波間のクラゲのようにたゆたっている。てるてる坊主に例えれば、頭に当たる部位がワンタンの餡だ。中には海老がギュッと詰まっている。

海老がギュッと詰まっている

この蝦餡がただ者ではない。剥き身の海老(蝦仁)だけでなく、そこに干しエビを混ぜてあるのだ。旨味が凝縮されなんとも濃厚な味わいが鼻腔を抜ける。つなぎにカレイのすり身を使うのが秘訣だそうだ。スープも合わせて多層的な美味しさ。厨師の技に敬服。

7. 生蚝豆腐

生蠔豆腐煲

生蠔豆腐煲。牡蠣と豆腐の土鍋煮込み。牡蠣と豆腐はまず素揚げしているのだろうか。オイスターソースで味付けされたとろみのあるソースが、ジワッと食材に絡んでいる。ホタテ・イカに大小のエビ。そしてカキ。変幻自在な海鮮料理に魅了されてしまう。

8. 炒青菜

炒青菜

青梗菜の炒め。日本だと最初の方で出てきそうな青菜炒め。このタイミングで出てくる構成に、本場らしさを感じてしまう。素材の青臭さと甘味とシャキシャキした食感が口の中をさっぱりリセット。食欲が復活した。

9. 香港炒面

鼓油皇炒麵

鼓油王炒面(鼓油皇炒麵)。私がコースをお願いする際にリクエストした香港風の醤油焼きそばだ。極細麺とモヤシだけのシンプルさ。これまであちこちで食べて来たが、黄ニラや白ごまも無い品は初めてだ。しかし味は抜群。弾力のある細麺は、鍋肌に焼き付けられてところどころ焦げ目が付いている。

弾力のある細麺に鼓油皇が絡む

醤油(豉油)・たまり醤油(老抽)・砂糖などで作った特製のタレ(鼓油皇)がその麺に絡む。これがいわゆる後を引く美味しさなのだ。食べ終わっても物足りないほど。舌の肥えた広州や香港の住民が大好きなのもよく分かる。仕込みに随分と手間が掛かるらしく、グランドメニューには非掲載。どうしても食べたい場合は事前に予約すべし。

10. 甜品

糖不甩

デザートは糖不甩。落花生ごま団子。愛らしい丸っこいお菓子で今宵の宴の幕が降ろされた。生ビールでの乾杯からスタートして、これまでに紹興酒をボトルで2本空けたり、お酒も結構飲んでいた。最後は温かいジャスミン茶を啜りつつ余韻を楽しむ。

ジャスミン茶で歓談

日本の中華料理の基礎となっている広東料理だけに、ワンタンや海鮮炒めはこれまで何度も食べてきた。しかし、どれも一工夫が加えられていて、容易に真似できないクォリティに仕上がっている。

鼓油皇炒麵でご満悦

鼓油皇炒麵もしかり。参加者の皆にも大いに満足してもらえた。ちなみに訪問した2日後、TV番組「Nスタ」で当店が紹介され、その3日後は「アド街」でも紹介された。放送日以降は大行列だそうだ。ラッキーなタイミングだった。

その後はバーなどで時間を潰して春節カウントダウンのイベントへ。関帝廟の隣、横浜中華学院の校庭が会場だ。

日付が変わった瞬間に爆竹が轟き、中国式の獅子舞踊りが披露された。イベント自体はごく短時間だったが、期待以上に楽しめた。平日に横スタ前の東横インをわざわざ抑えて訪れた甲斐があったというものだ。来年もまた企画したいなー。