あんとん
さて、四万十市中村での三軒目。うえた・このみに行く途中、とある駐車場の一角に簡素な作りの焼きそば屋を見つけた。屋号は「あんとん」、どうやら持ち帰り専門店らしい。前掲の2店を周った後、どのような麺を使っているのか確認したくなり、まだ胃袋に余力があったので寄る事にした。
自転車で窓口へ近寄るとメガネのおっちゃんが「いらっしゃい」と迎えてくれた。さっき通りがかったときは客が居たが、ちょうど空いてるタイミングだった。ラッキー。
ちなみに写真の青い自転車が、私が借りたレンタサイクル(600円)だ。中村駅から中村市街中心部までは結構距離があるので、鉄道で訪れる人は利用することをお勧めする。
メニューは焼きそばのみで小が350円、大が550円。この価格差だと大盛は倍の量になる気がする。この店が3軒目なので当然のように焼きそば・小(350円)を注文。
「5分くらい掛かりますが」
「はい、大丈夫ですよ」
鉄板を温めてから油を引いて、肉と野菜を焼き始めた。ふと厨房の奥を覗くとアントニオ猪木の人形がチラッと見えた。あー、なるほど。
「"あんとん"はアントニオ猪木からですか?」
「ええ、はい(笑)」
具に続いて麺を投入。やはりこれまでの店と同様の麺だ。
「こっちの焼きそばは平たい麺が多いですね」
「ああ、そういえばそうかも知らんね」
『けんみんSHOW』などでもありがちなことだが、地元民ほど普段食べてるものに無自覚なんだろうなあ。味付けしながらさらに炒め、発泡スチロール製の容器に移してできあがり。
「お待たせしました、どうぞ」
「ありがとう、お世話様」
冷めても美味いのだろうけど、やはり熱々が望ましい。そのまま中村駅へ戻って自転車を返した後、駅の休憩所で早速いただくことにした。
麺はやはり四万十特有、中太・平打ちストレートの茹で麺。具はモヤシとキャベツと肉。削り粉をたっぷり振り掛けながら炒め、2種類のソースで濃い目に味付けされている。削り粉はトッピングでも使われていて、その風味と甘めのソースが、コクのある味わいを醸す。本当に通り掛かりの店だったので正直期待はしていなかったのだが、充分美味しい焼きそばだ。量はほどほどで、さっと手軽に食べられた。
以上、3軒を食べ歩いただけだが、まず恐らく間違いなく「はまや製麺」の茹で麺がこの地域の焼きそばの特徴だろう。あとキャベツとモヤシがどの店にも使われていた。どちらも焼きそばでは一般的な具なのだが、キャベツかモヤシか、片方だけの店が意外と多いのでこれも特徴かも知れない。あと共通点ではないが、うえた以外では炒めている段階で削り粉が積極的に使われていた点にも留意したい。
ともかくも四万十の皆様方に置かれましては、普段食べてる焼きそばの麺が他所には無い品であることを自覚していただきく思う次第。街興しでB級グルメを……なんてことになった場合、「清水ひゃくひろ焼きそば」とか「香南にら塩焼きそば」みたいに開発型の焼きそばを新規にでっち上げたりしないで欲しいなあ。
余談だがドラマ化もされた漫画『深夜食堂』の「ソース焼きそば」という回で、高知出身の女優が四万十川の青海苔に涙するエピソードがある。しかし地元スーパーを探しても四万十川の青海苔は売っておらず、私が寄った店も一般的な青海苔を使っていた。結局、土産物屋で結構な高級品を購入したが、その女優の家でも「これだけは」と奮発した贅沢品だったかなと考えてしまう。
かくして交通費7600円で滞在時間は1時間半、焼きそば3杯食べただけでこの日は四万十市中村から高知へとUターンしたのであった。我ながら日帰りで帰るのは勿体無いとも思うが、個人的に全都道府県で高知が一番好きだから、まあこれで良いのだ。
店舗情報 | TEL:0880-34-5630 住所:高知県四万十市中村大橋通4丁目72 |
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主なメニュー | 焼そば 小 350円 大550円 |
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