お好み焼 ハルナ

2023年3月20日

3月初旬、とあるTV番組のオファーがあり、急遽大阪へ行くことになった。久しぶりの関西なので、いわゆる前のりをして焼きそばを食べ歩きたい。

そこで連絡を取ったのが、Twitterで知り合ったヤギセイヤーさん。独特な風貌、変わった経歴の持ち主で、神戸市長田区周辺のお好み焼屋に詳しい方だ。私のようにあっちこっち食べ歩いている存在から見ると、ひとつのエリアをじっくり掘り下げる彼の立場は羨ましくもある。

今回は直前に連絡したにも関わらず、快く長田の案内を引き受けてくださった。昼前に新長田駅で待ち合わせ、「はじめまして」のご挨拶。駅前の「コテ」モニュメントをバックに記念撮影した。なお、長田のあたりでは「テコ」と呼ぶのが主流らしい。

本町筋商店街を海側へ下ってゆくと、「ポット」というスーパーがある。店頭には横山光輝三国志の孔明の立像があるのだが、この日は解禁されたばかりのイカナゴの特売で客が大勢いて、近寄れなかった。

そのスーパーの斜向いから伸びる路地の入りっ端にあるのが、ヤギセイヤーさんオススメのお好み焼店、ハルナだ。創業は昭和23年だそう。戦前から「にくてん」屋が普及していた長田には、有名な老舗がいくつかあるが、知名度の低い名店がまだまだあるのだなあ。

小さなお店のため、混んでいて入れない日も多いのだが、幸いにも先客が一人しかおらず入店できた。鉄板を囲む椅子が6席あり、奥の方へ着席。壁沿いにも3席あるが、そちらは荷物置き場に使われている。

メニューはお好み焼と、焼きそばならぬそば焼のみ。新長田ならではの貝焼(1100円)を食べたかったが、シーズンではないとのことで、代わりにカキ焼(1000円)を注文。それとタコそば焼(800円)をお願いした。

ドリンクはアップルを2つ。この店ではアルコールを置いていない。一応は持ち込みが許されていて、ヤギセイヤーさんも時々持ち込むらしいが、お店に寄っては飲み屋扱いしてほしくないから置いてないケースも多いとのこと。余所者は自重した方が良さそうだ。

このお店の最大の特徴は、豚(牛？)の脂身を使った独特な焼き方だろう。脂身の固まりを鉄板に押し付け、滲み出た獣脂でお好み焼やそば焼を調理するのだ。まずは時間が掛かるお好み焼きから取り掛かる。

生地を丸く広げ、魚粉をまぶす。千切りキャベツをドーナツ状に盛り、中心に刻んだ青ネギを置く。大粒のカキを4粒配置して、その上から生地を垂らす。頃合いを見てひっくり返し、その上に脂身の塊を乗せておく。いい塩梅に油分が生地に足されるのだろう。

その横でそば焼きも焼き始める。お好み焼と同じ要領で、脂身を使って油を引く。生のタコと麺を焼き、千切りキャベツと青ネギを加えて混ぜ炒める。ある程度混ぜたら上からテコでギューっと抑える。

ヤギセイヤーさんによると、このようにそば焼を上から抑えて調理するのも、ハルナの大きな特徴らしい。たしかに他所では全く見たことがない。ソースで味付けしつつ、抑える作業を繰り返して出来上がり。食べやすいよう、鉄板の端に寄せてくれた。

タコそば焼の麺は、もっちりした中太麺。具はキャベツ、青ネギ、豚肉、タコ。タコの大きさにはびっくりした。ボイルしたタコではなく、生から焼いているのはさすが海が近い町ならではだ。

長田のそば焼は、基本的に箸やお皿を使わず、お好み焼と同じようにテコを使って鉄板から直接食べる。久しぶりなのでコツを思い出しながら食べ進めた。ソースはバラソースだろうか、さわやかな甘さが麺や具にマッチして、めっちゃウメーン！

麺を上から抑えて焼く工程は、麺に焦げ目を付けるのが目的かと思いきや、食べてみると思ったほど焦げていない。海鮮や肉、野菜の旨味を麺に滲みさせる効果があるのかな。

お好み焼は生地に脂が滲みていて、とても美味しそうだ。青のりに加え、白胡椒を一面に掛けるのがヤギセイヤーさんオススメの食べ方。牡蠣が大粒で、切り分けた一口がどうしても大きくなる。

食べてみると、牡蠣から滲みた水分でキャベツが蒸され、とろっとした食感。旨味たっぷりで、大阪のたこ焼きのような「外フワ中トロ」状態だ。牡蠣も食べごたえがある。そば焼もお好み焼も、なるほど独特で、しかも美味しい。興味深いお店を教えていただき、感謝感謝である。

食後は丸五市場のいりちゃんを再訪したり、スーパーの食品売り場を覗いたり、ヤギセイヤーさんに新長田をあちこち案内していただいた。宿が梅田だったので、この日は15時くらいでお別れ。次回はじっくり飲み歩きましょう！

店舗情報	住所: 兵庫県神戸市長田区二葉町2-1-13 営業時間: 11:30～20:00 定休日: 日曜・祝日
主なメニュー	そば焼・うどん焼 700円～ お好み焼 600円～