金豊園 海鮮城
「もしかして、あれですか?」
「でかっ」
「めっちゃ光ってますね」
ガチ中華が軒を連ねる西川口。そのJR東口から徒歩1分ほどの場所に、金豊園・海鮮城という店がある。東京餃子通信の塚田亮一さんと焼売マニアのシュウマイ潤さん。そして私の三人で現在とある企画が進行している。その企画の一貫で、4月中旬の平日、夜20時ごろにその店を訪れた。
他の店からのハシゴなので駅と逆方向からアプローチしたが、遠目にも目立つ建物だ。「城」と名乗るだけあって威圧感さえある。前述の3人に某出版社の編集さんを加えた4人パーティは、その外観で圧倒されてしまった。
外壁に掲げられた看板や掲示は全て中国語だ。日本語は一切ない。「日本語通じるかなー」とドキドキしながら入店すると、店員さんが中国語で挨拶してくる。客もスタッフも中国人ばかりのようだが、もちろん日本語のわかる店員さんもいた。4人だと伝えると、手近な席を促された。
一階はいくつものボックス席がファミレスのように配置されている。Googleマップの口コミではカラオケボックスなのか中華料理店なのかよく分からなかったが、二階以上がカラオケの個室になっているらしい。道路に面した壁際には、巨大な魚が泳ぐ生け簀まであった。さすが「海鮮城」!
オーダーはテーブルのタブレットから。東北や四川、広東・江蘇・福建などなど、いろいろなジャンルを本場の味で提供している。料理の価格設定が高めに感じるが、後述するように一品一品の量が多いので、結果的に割高感は薄れるはずだ。
お酒は紹興酒をボトルで注文。ショットグラスに注いで、乾杯した。他にも様々な中国酒がメニューに載っていた。知っている名前だと、二鍋頭などの白酒や山西省の汾酒、五加皮酒や青島ビール・哈爾浜ビールなどなど。
お通しは豚皮の煮凍りと揚げ落花生。中国語ではそれぞれ「皮冻」(皮凍)および「油炸花生米」と呼ばれる。どちらも中国では定番のおつまみだ。
餃子・焼売・焼きそばのマニアが集っているので、料理はそれぞれの専門分野を一品ずつ注文することに。この店はそれぞれ個性的な品が提供されている。数ある西川口のガチ中華からこの店を選んだのも、それが理由だ。
まず餃子は「ロバ餃子蒸し」(驴肉蒸饺/1298円)。そう、あのロバだ。中国ではとても美味しい肉として珍重されており、「天上龙肉,地上驴肉」(天上龍肉,地上驢肉)=「天上には龍の肉あり、地上には驢馬の肉あり」とまで讃えられるそうだ。
ロバ肉餃子は一粒が結構でかく、皮は細かなひだを重ねている。餡にはロバ肉だけでなく玉ねぎが使われているのか、甘めの味わいだ。一緒に出されたニンニク醤油をつけると、バランスが取れてちょうどよい塩梅になる。めちゃくちゃ旨いかと訊かれたら答えに困るが、香りや味などにも癖がなくて食べやすい。慣れればもっと美味しく感じるのかも知れない。
これまでに様々な餃子を食べてきた塚田さんも、さすがにロバ肉は初めてとのこと。
「日本だと餃子自体にニンニクを入れますが、中国だと餃子にはほぼ入れないんです」
「へー」
「こうやってニンニク醤油を別に出したり、生にんにくをかじりながら食べたりするんですよね」
そんな蘊蓄を語ってくれた。
続いて焼売は、「もち米と椎茸の紙皮焼売」(纸皮糯米香烧卖/1298円)。テーブルに蒸籠が運ばれ、中身を見て、その焼売の大きさに驚いた。想像を大きく上回るサイズで、日本のおにぎりくらいある。
お皿に取り分けたら、ずっしりと重い。箸で割ってみると、中には味付けされたもち米がミチミチに詰まっていた。肉や椎茸も混ざっている。まるで台湾の粽(ちまき)のような味わいだ。食べ応えも満点。
もち米の焼売は中華料理店で時々見かける品なので、シュウマイ潤さんだけでなく私も何度か食べたことがある。しかしこんなに大きく、中に肉や椎茸が入っている品は初めてだ。調べたところ上海あたりで食べられるスタイルの焼売らしい。現地では朝ごはんの定番だそう。
そして焼きそば。この店は多ジャンルに渡っていて品数も多いのだが、意外にも麺料理の数は限られていて、焼きそばの類も多くない。基本的にごちそう寄りの一品料理や、大人数で食べる鍋料理などがメインで、麺・飯系の料理は脇役なのだ。
そんな中から私が選んだのは「福建焼きそば」(福清焖面/1518円)。使われている麺は太めの角麺。やわやわだけどしなやかで千切れない。具は白菜を中心とした野菜と魚介類。エビ、カニ、アサリ、カキなど。旨味たっぷりのつくだく仕立てでめっちゃウメーン!
ちなみに焼きそばと和訳されているが、「炒麺」ではなく「焖面」(燜麺)。汁気が少なめの煮込み麺だ。これまでにも蒲田の厦門厨房や池袋の沸騰小吃城、福清菜館・福来園で似たような福建の煮込み麺を食べたことがある。
この店が提供する「福清焖面」は、その中国名の通り、福建省福清市の郷土料理だ。長崎・四海楼の創業者・陳平順が福清市の出身ということもあり、この「福清焖面」が長崎チャンポンや皿うどんのルーツという説もある。確かに味の方向性が、長崎ちゃんぽんと共通している。機会があれば実食してほしい。
餃子・焼売・焼きそばとも一品の量が多かったため、各専門の三品を食べ終えた時点で、皆ほぼ満腹になってしまった。それ以前に他の店からハシゴしてきたのだから仕方あるまい。
しかし、せっかく多人数で訪問したのだから、これで終わるのも名残惜しい。最後の悪あがきで追加注文。私のリクエストでトーストと羊の串焼きをオーダーした。
こちらが「トースト」(烤面包/1串 198円)。羊の串焼きを出す東北料理店で時々見かけはするのだが、今まで一度も食べたことがなかった。こんがりと焼き上がった食パンに、唐辛子と白ゴマがまぶされている。串を抜いて一口分をちぎり、ガブリと食べて驚いた。
「えっ! 甘っ!?」
なんと甘いのだ! 食パンには甘いシュガーバターが塗ってあり、そこに唐辛子とゴマがかかっているのだった。辛さはあるけど、基本的には甘い。しかしその妙な味わいが癖になる。これはアリだな。他の参加者も食べてみて、予想外の味わいに目を丸くしていた。こういう意表を突く品があるから、食べ歩きは面白い。
締めは「ラム肉の串焼き」(小笨羊肉串/1串 165円)。通常はクミンなどのスパイスをドバッと掛けて、味付けしてある。しかし今回はシュウマイ潤さんが辛いものがそれほど得意ではないので、辛味なしを選択した。それでも普通に美味しい。誰もが好きな味である。他の部位もいろいろあるので、再訪したら食べ比べてみよう。
いろいろ食べ終わってお会計。時間が経つと、上の階でカラオケを楽しんでいた中国人の大家族が降りてきた。お子さんからお年寄りまで、みんな楽しそうだ。カラオケも中国語の曲ばかりらしいので、現地そのままのスタイルで気兼ねなく羽を伸ばせる店なのだろう。家族団らんは国籍に関係なく微笑ましいものだ。
この界隈は最近、移民問題で騒がれている。日本人と外国人。生まれ育った環境が違うわけだから、相違点が多いのは間違いない。しかしそもそも同じ人間なので共通点もそれ以上に多いはずだ。こういうお店で異文化と接することは、相互理解の第一歩にもなりうる。パスポートのいらない海外旅行気分で、ちょっと覗いてみるのもオススメですよ。
| 店舗情報 | 住所: 〒332-0034 埼玉県川口市並木2-19−13 営業時間: 11:00-00:55 定休日:なし |
|---|---|
| 主なメニュー | 福建焼きそば(福清焖面) 1518円 ロバ餃子蒸し(驴肉蒸饺) 1298円 もち米と椎茸の紙皮焼売(纸皮糯米香烧卖) 1298円 トースト(烤面包) 1串 198円 ラム肉の串焼き(小笨羊肉串) 1串 165円 |







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