味の兆楽
今年はあれこれメディアへ露出されていただいた。その中の某番組の収録の帰り道、担当のディレクターさんに誘われて訪れたのが、渋谷の老舗中華屋・味の兆楽だ。
場所はセンター街のド真ん中、井ノ頭通りの三叉路、宇田川交番の裏手だ。センター街を何度か訪れた人なら、場違いな中華屋に見覚えがあるかも知れない。そのディレクターさんが普段から愛用しているそうで、私も前々から気になっていた店である。
訪れたのは、とある平日の20時半ごろ。客席は厨房を囲むL字カウンターが15席ほどと、4人掛けのテーブルが2卓。席はほとんど埋まっていて、カウンターに辛うじて2人並んで座ることができた。
メニューは定食と丼物、麺類がメイン。まずは瓶ビール(500円)でお疲れ様の乾杯だ。生ビールもあったが、こういう店には瓶が似合う。ちなみに銘柄はキリン一番搾りで、東京限定ラベルだった。
「やっぱり焼きそばですよね!」と、勧められるままに焼きそば(650円)を注文。味付けはソースと正油が選べ、ソースを指定した。
麺は中細の茹で麺。恐らくラーメンの麺を流用しているのだろう。わざと切るように炒めたのか、一本一本が短い。具はキャベツ・モヤシ・人参など、野菜が中心だ。
野菜を炒め、茹で上げた麺を入れ、味を調えてソースで仕上げ……。オーソドックスなソース焼きそばなのだが、町中華のソース焼きそばはコナモン屋のそれとは微妙に違っていて、野菜炒め風にしっとりした品が多いのが面白い。
「もひとつ焼きそば食べましょうか」
「いやー、焼きそば以外でもいいですよ」
「いえいえ、せっかくですから(笑)」
「じゃあ、ルース焼きそば(750円)いきますか」
「ルース」はベーブルースでもフットルースでもなく、「青椒肉絲(チンジャオロースー)」の「肉絲」のこと。細く切った豚肉・ピーマン・筍を甘辛く炒め、片栗粉でとろみをつけた餡が焼きそばに掛かっている。
麺は先ほどと同じだが、しっかり焼かれたところに濃厚な餡が絡んで、実に美味しい。豚肉や筍の歯応えと甘辛い味付けにビールが進む。2皿ともいかにも町中華というジャンクな味わいだが、これが本来、労働者や学生が空腹を満たし、スタミナを付けるために求められてきた品々なのだ。
そんな焼きそばを前に、美味しさと言う評価軸だけでは見逃してしまいがちな焼きそばの魅力について、ディレクターさんに熱く語ってお会計。以前紹介した後楽本舗ともども、この渋谷の活力源として、末永く残って欲しい町中華である。
店舗情報 | TEL: 03-3461-6400 住所: 東京都渋谷区宇田川町31-5 営業時間: 11:30~翌3:00 定休日: なし |
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主なメニュー | 焼きそば(正油・ソース) 650円 ルース焼きそば 750円 五目焼きそば 750円 |
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