本とん平

2014年3月21日

まだまだ続きます、西日本のコナモノ屋の焼きそば特集。コナモノはお好み焼やたこ焼きに限りません。


近松門左衛門の戯曲・曽根崎心中の舞台となった大阪市北区曽根崎。お初と徳兵衛が命を絶った露天神社は一躍有名になり、「お初天神」と呼ばれるようになった。

曽根崎・露天神社 通称、お初天神

その曽根崎のお初天神通りに本とん平というお好み焼屋がある。関西風お好み焼の店の定番メニュー・とん平焼きの発祥のお店と知り、焼きそば食べ歩きも兼ねて訪れてみた。

曽根崎 お初天神通り 本とん平

8月下旬、平日の20時過ぎ。往来に人通りはあるが、ほとんどが既に一杯引っ掛けて家路を急いでいる風だ。目的の店は特に目立つ風でもない、ごく普通の外観。中へ入ると、「いらっしゃいませー」と細身の女将さんが迎えてくれた。

客席は全てカウンターで、Jの字を崩したような変わった配置。席数は15~20席くらいか。タイミングがたまたまなのか、先客は無し。「こちらが涼しいですよ」と左手奥の席へと促された。テレビも観易い良い席だ。

本とん平 メニュー

壁のメニューはとん平焼、焼きそば、お好み焼、餃子と頗るシンプル。お好み焼もとん平焼も800円からなので、ちょっと値段は高めだ。とん平は「チャップ(=ロース)」と「牛ロース」の2種があるが、「とん平」と呼ぶくらいなので豚肉が良かろうと、とん平焼(チャップ・800円)とレモンチューハイを注文した。

向こう正面のカウンターの鉄板を使って調理する様を、レモンハイをちびちび飲みながら観察する。ちなみに飲み物の値段は書かれていないが、レモンチューハイは一杯350円で計算されていた。

まず生地を横長に広げて厚切りの一枚肉を乗せ、ソースをひと塗り。生地に火が通ったところでひっくり返し、横で玉子の黄身を崩して軽く焼く。肉を下に生地を玉子に乗せ、最後のひっくり返し。ケチャップ、カラシ、マヨネーズ、ソースを塗ってコショウをパラっと振り掛けて出来上がり。こちらの鉄板に運んだあと小手で切り分けて、さていただきます。

とん平焼(チャップ) 800円

味付けは濃い目だが、もっちりした生地に肉と玉子のシンプルな味がマッチしている。テレビの阪神戦を眺めつつ、とん平焼をつまみにレモンハイを飲むのが何とも落ち着く。味もボリュームもお好み焼より酒の肴向きだ。思ったより小ぶりで、ぺろりと軽く食べられた。各地に広まったのも分かる気がする。

レモンハイをお代わりして豚焼きそば(800円)を注文。これも向こうの鉄板で調理してくれた。出来上がった品は割り箸を添えて皿で出された。

豚焼きそば 800円

麺はシコシコした食感の太麺。具はキャベツと豚肉。紅生姜の微塵切りと葱も少々一緒に炒めてある。味付けは塩コショウとソースで、これもやや濃い目の味付けだ。量はほどほどでやはり酒のつまみにぴったりだ。

「実は東京からやって来て……」という話題に始まり、女将さんとなんのかんの駄弁った。息子さんが小倉に居て、あちこち向こうの美味しい店を案内して貰ったそうだ。

「そこの芋焼酎も息子に送ってもらったんです」

麦は二階堂だが、芋焼酎はレアもののようだ。ふむふむ、今度来るときは芋焼酎を頼んでみよう。お会計は2200円。

「おおきに、またこちらへ来られたときはお寄りください」

ちなみにWikipediaによると、この店を創業した店主が、戦時中にロシアの捕虜になった時に現地の兵隊が食べていたものを参考にして出したのが「とん平焼」らしい。店によって具も調理法も異なるが、とん平好きな方は元祖の味を一度試してみてはいかが?

本とん平

店舗情報TEL:06-6311-2395
住所:大阪府大阪市北区曾根崎2-13-19
営業時間:12:00~翌1:00
定休日:無休
ホームページ
主なメニューとん平焼 チャップ 800円 牛ロース 1500円
焼そば 豚 700円 イカ 800円
お好み焼各種 800円