コチンニヴァース

2016年5月20日

南アジアの焼きそば系料理特集、1週目のネパール・ブータンに続いて、2週目はいよいよ本丸、インドです!


インドにはインド風の中華料理、インディアン・チャイニーズ(Indian Chinese, 以下、インド中華)という料理ジャンルがある。ネパール経由でもたらされたチョウミン(Chowmein)もそれに分類され、ポピュラーな庶民の味として親しまれている。

本場のインド中華(なんとも座りの悪い表現だが)のチョウミンを食べてみようと選んだのは、西新宿にあるコチンニヴァースというお店。シェフは南インドのケララ州出身。カレー細胞さんの記事によると、ネパール人ではなく生粋の南インド人がインド中華を出す店は、日本ではとても貴重なんだとか。

西新宿 インド料理 コチンニヴァース

訪れたのは3月中旬、平日の20時近く。冷たい雨の中が降る夜のこと。地下鉄大江戸線の西新宿五丁目駅を降り、細くて寂しい路地を進むと、暗闇の中で青いフードが照らされていた。COCHIN NIVAS。ここだ。

こじんまりした店舗で、客席はテーブル2卓とカウンター、あわせて12人分ほどしかない。すでにテーブルは埋まってて、カウンターにも一人の先客。満席寸前のところで一番手前のカウンターに着席できた。

キングフィッシャー 650円

まずはビールだ。大好きなサッポロラガー(中瓶・580円)もあるが、ここはあえてインドのキングフィッシャー(小瓶・650円)をチョイス。すっきりした癖のない軽い飲み口だ。食前酒にぴったり。

落ち着いたところでメニューをじっくり確認。インド中華は最初のページに載っていた。

コチンニヴァース インド中華メニュー

チョウミン(チョーミン)は「ミックス」「野菜・玉子」「野菜のみ」の三種があり、ミックス(1300円)を注文。英語表記が「Chowmein」や「Choumin」ではなく、「Indian Noodles」なのが興味深い。サイドメニューに選んだのはチリチキン(1100円)。事前情報で、マンチュリアンというトロミのついた炒め物に目星を付けていたのだが、日によってメニューが入れ替わるらしく、この日は載っていなかった。

先客の注文に続いて、目の前の厨房で注文した品々が作られ始める。シェフの鍋の振り方が堂に入っていて、インド料理店ではなく中華料理店にいる気になってきた。10分余りで出来上がり。チョウミンとチリチキンの皿が同時に運ばれて来た。

チョウミン(ミックス) 1300円

まずはチョウミン。麺は中細ストレート。具はエビ・チキン・玉子・人参・キャベツ・ピーマン。エビとチキンがたっぷり入っていてなかなか豪華。見た目は完全に中華焼きそばだが、シェフいわく、これが南インドのスタイルのチョウミンとのこと。

見た目も味もほぼ中華!

味付けもマサラ的テイストは皆無で、ネパール料理店で食べたチョウミン(こことかこことか)よりずっと中華っぽい。日本の大衆中華の店で出てきても違和感のない品だ。ベースはたぶん塩とスパイス、おそらくソヤソース(醤油)も使われてそう。ただしスパイスはかなり控えめだ。かすかにシナモンの香りが漂うあたりにインドらしさを感じたが、意識しないとわからない程度である。

インドから仕入れている麺、美味い

麺もこれまで食べたチョウミンとは全く違う。メニューに「焼きそばですが、麺が独特です。インドから直接仕入れています」と書かれている通り、シコシコしたコシのある乾麺だ。とても美味しいチョウミンだが、まさかここまで中国側に寄せているとは思ってなかった。距離的に中国から遠い南インドのチョウミンの方が、ネパールよりも中華っぽいなんて、食べて比べてみるまでわからないものだなあ。

チリチキン 1100円

続いてチリチキン。これもインド中華の一種で、現地でもポピュラーな品らしい(こちらを参照)。揚げたチキン、玉葱、ピーマンを炒めて、スパイシーなケチャップベースのトロミ餡を絡めてある。ジンジャーが効いていて、鶏肉の旨味と野菜の甘味を引き立てている。ちなみにトロミの付いたカレールーのことをインド料理では「グレービー(gravy)」と呼ぶのだが、こういう中華餡も「グレービー」で通じるらしい。

インドらしさは置いといて美味しい

こちらもやはり文句無く美味しいのだが、見た目・味わいとも完全に中華料理で、インドらしさはどこへやら。「もっとインドっぽさを出してもいいのよ? 遠慮しなくて構わないのよ?」と思うが、これが現地の味というから仕方ない。

選んだ料理が中華テイストすぎて、なんだかインド料理屋へ来た気がしない。食べているうちに脳が混乱してしまったので、少し落ち着こうとお酒のお代わりを注文。選んだのはジンジャーハイボール(600円)。生姜がガツンとくるハイボールで多少は頭がスッキリした。

ジンジャーハイボール 600円

会計は3650円。いやあ、なかなか貴重な経験ができた。中華料理目的なら中華料理店の方がコスパは良いだろうが、インド料理店の中華料理という珍しさで自分は十分満足できた。とはいえ、いつか普通のインド料理も食べに来たいな。

狭いお店なので複数人で行く場合は事前に予約するのがベター。あ、あと「インド中華」という単語は覚えておくと幸せになれるかも。来週の記事で頻出する予定なので。

コチンニヴァース

店舗情報TEL:03-5388-4150
住所:東京都新宿区西新宿5-9-17 1F
営業時間:11:30~14:30 17:30~21:30
定休日:火曜
主なメニューチョウミン(ミックス) 1300円
チョウミン(野菜・玉子) 1050円
チョウミン(野菜のみ) 950円

チリチキン 1100円