大田食堂
鳥羽市の南方、志摩との市境近くに相差(おうさつ)という地区がある。太平洋に面していて漁港や海水浴場を擁する小さな町だが、その千鳥ヶ浜海水浴場の外れに店を構えているのが今回紹介する大田食堂だ。何やら変わった焼きそばがあるらしい。
訪れたのは昨年の5月上旬、平日の昼過ぎ。鳥羽市街からも交通の便の悪い場所だが、伊勢・鳥羽方面を訪れたついでに足を伸ばしてみた。店は本当に海岸のすぐ脇にある。店の前に広がる千鳥ヶ浜はあいにくの雨模様で薄暗く煙っていた。
ドアを潜ると明るい感じの若い店主が「いらっしゃい!」と迎えてくれた。小上がり2つにテーブル2つ。カウンター5席で先客は無し。到着と同時に車が出て行ったので入れ違いだったのかも知れない。
「雨が酷いですねー」
「ええ、バイクで来たんですが参りました」
「あー、そりゃ辛い」
そんな会話を交えつつカウンターに腰掛けてメニューを確認。
食事メニューは麺類と丼物のみ。冷やし伊勢うどんなんて品もちょっと気になるが、目的の品、自家製焼きそば(600円)を注文。
調理の様子は良く見えないが、麺は蒸し麺ではなく茹でているようだ。随分と手順が複雑なようで出てくるまでに15分ほど掛かった。やがて「お待たせしましたー」と焼きそばが配膳される。うーむ、見た目からして変わった焼きそばだ。
皿はキャベツで覆われ、麺も含めて全体的に色が白い。麺はかなり柔らかい太麺で一本一本が短い。具はキャベツと豚肉のみ。この麺と具を茹で炒めたものらしいが、他所では全く見かけたことの無いしっとりした具合に仕上がっている。片栗粉でトロミでも付けているかのようなベタベタ感。
「ソースを好みで掛けてくださいね」と言われた通り、この店はソース後掛けスタイルの焼きそばである。出された状態ではほぼ味無しで全く美味くもないのだが、酸味の効いたソースをダバダバっと掛けて食べるとそれが「むむ? 美味い!」と一変する。
「何だろう、この味わいは」と似た例を考えたら、伊那ローメンのつゆだく系が思い出された。麺や肉の違いはあるが、麺と具の調理法から好みの分かれそうなところまで似ているように思う。今回は掛けそびれたが胡椒も合うらしい。
「変わった焼きそばですねー」
「俺が生まれる前からうちの爺さんが出してたんで、もう四十年以上ですねー」
「へー、そんなに前から!」
「地元の人はこの店の焼きそばはこれって分かってるんですけどね」
「ほおほお」
「観光客だとほとんど残す人も居たりするんですよ」
「あはは、普通の焼きそばのつもりで注文しますからねー」
この焼きそば、地元テレビ局のローカル番組でも紹介されたらしい。気軽に訪れるという訳には行かない場所だが、ちょっと変わった名物としてもっと知られるようになればいいなあ。
店舗情報 | TEL:0599-33-6675 住所:三重県鳥羽市相差町1457-2 営業時間:11:00~14:30 定休日:不定休 |
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主なメニュー | 自家製焼きそば 600円 中華そば 400円 伊勢うどん 400円 冷やし伊勢うどん 400円 焼うどん 600円 かつ丼 750円 他人丼 650円 玉子丼 550円 |
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