ニューオーキタ
鹿児島編も一段落して、ようやく普段通りの記事を紹介できる。……と思っていたのだが、いま、とある本の企画が進行中で、相変わらずいろいろと忙しい。その本の担当編集者さんから、四谷三丁目の「ニューオーキタ」という日本酒バルに変わった焼きそばがある、と教えていただいた。
日本酒のお店ということもあり、今回は酒場案内サイト・Syupoを主催する酒場案内人の塩見なゆさんをお誘いして、訪問してみた。塩見さんは先日、『マツコの知らない大衆酒場の世界』にも出演されたばかりなので、ご存知の読者も多かろう。
ニューオーキタを訪れたのは、5月中旬の平日、夜19時ごろ。四谷三丁目駅の3番出口から徒歩3~4分の裏通りに店舗がある。控えめな明るさの照明が入口の目印だ。
ホールは落ち着いた雰囲気で、カウンターに日本酒のボトルがズラッと並べられている。客席は厨房に面したカウンター10席と、テーブルが9席ほど。我々以外にも前後含めて次々とお客さんが来店されていた。席数が限られているため、満席で入れないグループもいる。
まずはサッポロ赤星の中瓶(800円)で乾杯。ちなみに塩見なゆさんとは、12年ほど前に「メシコレ」を通じて知り合い、このブログにも何度か登場していただいている。日本のみならず海外まで飲み歩いている酒場マニアだ。一昨年、私がロンドンでパブ探しをした際にも、塩見さんの記事を参考にさせていただいた。もし旅先で飲食店探しに迷ったら、ぜひSyupoで探してみてね。
ニューオーキタでは、タブレットでメニューを見るスタイルだ。こちらの記事によると、店主・落合笙(しょう)さんは島根のご出身で、このお店も島根県出雲市内にある酒場「SPACE(スペース)大北」の2号店という位置づけとのこと。フードメニューにも、山陰地方にゆかりのある食材や郷土料理が並んでいる。お客さんも島根や鳥取など、山陰出身の方が多そうだ。
例えば十六島(うっぷるい)の板ワカメ。「十六島」は島根の地名で、店主・落合笙さんの出身地だ。「島」とついているが、本土の地続きの岬である。板ワカメは、その十六島の名物の一つとのこと。
板ワカメは単体で食べても美味しいが、板海苔のような使い方もできる。この日はメモを取り忘れたので間違ってるかもしれないが、たしか「富山の生桜海老と大根と梅のさっぱりあえ」(1000円)にトッピングしていたいただいた。板海苔に比べ、よりシャープな味わいで酒の肴に最適だ。パリッとした食感と荒磯を感じる風味が癖になる。
こちらは「江木の赤てん」(600円)。島根県西部・浜田市にある江木蒲鉾店のロングセラーだ。20年前、私は同エリアをツーリングした際にこの「赤てん」に出会い、それ以来、見かけたら注文するようにしている。魚の練り物にパン粉をまぶして揚げた製品で、ニューオーキタでは軽く炙って提供している。唐辛子が混ぜ込まれているため、ピリ辛で後を引く旨さだ。
さて、肝心の焼きそばだ。メニューには「出雲大社町の”きんぐ”のやきそば」(1200円)と掲載されている。出雲大社の近くに「きんぐ」という食事処があり、そこの名物の焼きそばを、このお店が正式に許諾を得て提供しているのだ。
出雲の「きんぐ」は当ブログでも紹介済みなのだが、東京から出雲まではかなりの距離がある。私も15年前に一度訪問しただけで、再訪できていない。それだけに東京で食べられるのは、とても嬉しい。おまけにかぶりつきで調理の様子まで観察できてしまう。
こちらが「出雲大社町の”きんぐ”の焼きそば」(1200円)。見ての通り、色が白っぽい。実は「きんぐ」の焼きそばは、ソースあとがけタイプなのだ。軽く下味はつけてあるが、客が自分の好みでソースをかけるスタイルである。
麺を炒める油はラードを使っているそうだ。油脂の風味とソースの味わいが相まって、めっちゃウメーン! オーバルのお皿も含めて、あの「きんぐ」の焼きそば、そのものだ。
実はこの日が訪問三度目だったのだが、前二回ともたまたま焼きそばが品切れだった。麺とカマボコをわざわざ島根から取り寄せており、それらがないと提供できないそうだ。しかも麺の下ごしらえも必要なため、なかなか手間がかかっている。私のように二回連続で品切れというケースはほとんどありえないらしいが、確実に食べたい方は予約することをオススメする。
ちなみにソースあとがけ焼きそばは日本各地に点在している。東京だと新宿にあった「ラーメン若月」がソースあとがけスタイルだった。「ラーメン若月」の焼きそばは、二度蒸し麺かつ下味にソースを使っていたため色は茶色だった。しかしソースをかけて初めて味が完成するので、あとがけに分類してよいだろう。塩見なゆさんと、あの辺りのお店の話題で盛り上がる。なぜソースあとがけが各地に点在しているのかは、ハヤカワ新書『ソース焼きそばの謎』をお読みください(宣伝)。
焼きそばを食べ終わる頃にお酒のお代わり。前述の記事によると、ニューオーキタでは日本酒のソーダ割りを推しているらしい。ということで塩見なゆさんは、たしか「純米にごり酒 扶桑鶴」。私は「梅津の生酛 笊」のソーダ割りを注文。爽やかな飲み口で、新鮮な感覚のカクテルだ。
締めは出雲大北の畑で採れたスナップエンドウのゆで(700円)。シャキッとした歯ごたえと芳醇な豆の味わいが日本酒ソーダに合う。もう一杯、別のをお代わりしたあたりで、お店もだいぶ混んできたので、ここでお会計して河岸を変えた。
四谷三丁目の隠れ家的日本酒バルが、山陰地方から上京してきた方々の憩いの場に育ちつつある。訪れた際はぜひ「きんぐ」の焼きそばをご賞味あれ。現地以外で食べられるのは、たぶんここだけ。貴重ですよ。
| 店舗情報 | 住所: 東京都新宿区左門町1-17アパルトマン四谷1F 営業時間: 18:00〜0:00 定休日: 水曜・日曜 → ホームページ |
|---|---|
| 主なメニュー | 出雲大社町の"きんぐ"のやきそば 1200円 浜田市 江木の赤てん 600円 サッポロ赤星中瓶 800円 |








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