元祖せち焼き やました
紀中の中核都市、和歌山県御坊市。この街に「せち焼き」という一風変わった焼きそばがある。やましたはその元祖の店だ。
四月中旬の平日、14時前に訪問。店の業態はお好み焼き屋で、各テーブルは一面鉄板である。先客は一人。丁度イカせち焼きを注文していたので、「僕も同じのを」と明るいおばちゃんに頼む。先客は御飯・味噌汁を追加注文していたが、こちらは食べ歩きなのでさすがに控えておいた。それにしてもやはり関西では焼きそばはおかずなのか……
さて、そのせち焼きについてだが、とりあえずお店のメニューに載っていた説明文を引用しておこう。
せち焼きは、1960年頃、初代店主、山下夏子がお客様とともに考え出したもので、当店で生まれました。「おばちゃん、焼きそばを、卵でせちごうてくれ。」せち焼きの語源は御坊弁の「せちがう」からきています。
「せちがう」とは無茶苦茶にするというような意味です。
ありていに言えば焼きそばの玉子綴じである。焼きそばに玉子というと、具の一つとして使うか、オムそばに使うのが一般的だが、客の求めに応じて綴じてしまったという発想が面白い。最近のB級グルメブームの影響で話題になってるらしく、マスコミの取材の記録や芸能人の色紙が壁に沢山飾られている。
お好み焼きは各自で焼くのだろうが、せち焼きは必ずお店の人が焼いてくれるようだ。キャベツの千切りとイカを鉄板に広げ、塩・胡椒・アジシオをパッパしてまぜまぜ。蒸し麺を投入し、まずウスターソースを掛けて解してまぜまぜまぜ。さらにドロソースを掛けて味を調えてまぜまぜまぜまぜ。さらにさらに弱火にしてから生卵2個を投入して、まぜまぜまぜまぜまぜまぜまぜまぜ。なるほど、これが「せちがう」か。混ぜ終わると全体を中央に集めて丸くまとめた。
「もう一度ひっくり返しにきますんで、このまましばらく待っててください」
待つこと3分ほど。トッピングの要不要を確認された後、儀式開始。生地をひっくり返し、焦げた麺と具が固まっているところにドロソースを一塗り。そこにマヨネーズをにゅるにゅるっと縦横に掛ける。青海苔と鰹節をたっぷり掛けてできあがり。
見た目はまるでお好み焼きだ。小手で切り分けてみたが、卵はフワフワした状態で固まっていた。麺は太めで柔らかく、ソースの味付けはやや甘め。キャベツは千切りのためかほとんど存在感が無い。それに比べて卵の存在感は圧倒的だ。鉄板で焦げた麺のパリパリした歯応えと、たっぷり使った卵のフワフワした食感が絶妙に美味しい。イカの味わい・噛み応えも良いアクセントになった。噂に違わず本当に独特の焼きそばだった。
会計の際に「東京から来ました、美味しかったです」と告げると「おおきに、ありがとう」と何度もいうおばちゃん。好感を抱かざるを得ない。それにしても何故メニューの裏面は英語なのだろう? 今度行くことがあれば訊いてみよう。
店舗情報 | TEL:0738-22-3227 住所:和歌山県御坊市湯川町財部49-12 営業時間:11:00~18:00 定休日:火曜、水曜 → ホームページ |
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主なメニュー | せち焼き いか・肉・豚 各650円 ミックス700円 焼きそば いか・肉・豚 各590円 ミックス640円 ご飯 大230円 中200円 小180円 味噌汁 100円 |
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