金糸雀
ある日、私のバイク仲間のMr.mudさんから昔甲府にあったという焼きそばの情報をいただいた。小学生の頃、当時あったオギノオリオン店(現パセオ)へ家族連れで買い物に行くと、毎回の様に地下にあった喫茶コーナーでミートソースの掛かった焼きそばを食べたそうだ。
「焼きそばにミートソース」といえば新潟のイタリアンを思い出すが関連は不明。ただ調べてみると、今でもそれと同じ系統の焼きそばを食べられる店が山梨県内にいくつかあるらしい。こちらの記事を参考にして、韮崎の「パブ喫茶・金糸雀(カナリア)」へ行ってみた。
訪れたのは土曜日の昼前。和菓子・洋菓子を販売する店の中にさらにドアがあるのだが、そこが金糸雀の入り口だ。昼は喫茶店、夜はパブ。どうにも入り辛い雰囲気だが営業中という札に促されてドアを開ける。
窓が無いため店内は暗かった。右手にカウンター、左にテーブル席が並んで奥は少し広くなっている。カウンターに腰掛けるママさんがいぶかしそうにこちらを眺めている。
「喫茶店、今やってます?」
「ああ、はい。大丈夫よ」
客と分かってテーブルに促された。腰掛けてお絞りを受け取ると、メニューは渡されないまま注文を訊かれた。
「ホットでいい?」
「あ、いえ、ミート焼きそばを食べたいんですが」
「あー、はいはい。最近も東京から食べに来た人がいたわよ(笑)」
「せっかくなのでホットもください」
「はーい、ちょっと待っててねー」
とりあえずと温かい緑茶を出してくれ、照明も明るくしてくれた。お喋り好きなようで、調理に取り掛かって手を動かしながらも色々と話してくれる。この店のミート焼きそばは元々「きねや」というお菓子屋の喫茶部門が提供していたそうだ。そういえば店頭に「きねやチェーン・花わらべ」という看板も掲げられていた。
きねやは山梨県内でチェーン展開して甲府の喫茶コーナーもそこが運営していたらしい。しかしその後経営陣や社名が変わるなど紆余曲折を経て喫茶部門のチェーンは解体され、この喫茶店は今は個人でやっているそうだ。
「はい、お待たせ」
そうこうしているうちに焼きそばが出来上がった。ミートソースの香りを漂わせた皿と割り箸がテーブルに置かれる。
麺は太めで断面が四角いタイプだ。食べてみるとシコシコとした食感で思ったより腰がある。掛けられたミートソースは挽肉がたっぷり使われて濃い目の色をしている。一方、焼きそば自体の具はキャベツのみで味付けも薄めだ。刻み海苔のトッピングは独特だが、角太麺はみかづきの、ミートソースはフレンドのイタリアンに似てる。麺にミートソースを絡めて食べると、実に贅沢な焼きそばの味わいになる。
「昔はラードを使ってたけどね。コクが出るけどコレステロールがねー」
そんなことを言いながらサービスでおでんも出してくれた。さらにコーヒーには付けあわせのお菓子までいただき、しばらく話し込んでしまった。すっかりくつろいでお会計。ミート焼きそばが600円、ホットコーヒーが400円で丁度1000円。いやぁ、明るいママさんとのお喋りで楽しいひと時を過ごせた。
「今度は夜に来ますよ、一杯呑みに」
「あら、お待ちしてます、お友達も連れて来てね(笑)」
閉じたシャッターの多い寂れた商店街だが韮崎に行く楽しみが出来た。夜もきっと明るく楽しく呑めることだろう。
店舗情報 | TEL:0551-22-1319 住所:山梨県韮崎市中央町9-2 営業時間:11:00~14:00、18:30~ 定休日:水曜日 |
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主なメニュー | ミート焼きそば 600円 ホットコーヒー 400円 |
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