ウランバートル

両国に「ウランバートル」というモンゴル料理店がある。前から行ってみたかったその店へ、常連の同僚が案内してくれることになった。連れてってくれるのはモンゴル共和国ウランバートル出身のWEBデザイナー、うーれんさん。日本語も堪能で、案内人としてこれ以上の適切な人はいないだろう。

両国 モンゴル料理 ウランバートル

「ウランバートル」を訪問したのは3月中旬、平日の夜。仕事仲間4人で予約した。店舗はJR両国駅から数分の場所。目立つ看板が掲げられているので見逃すことは無いだろう。

モンゴル料理 ウランバートル 店内の様子

「ウランバートル」のオーナーは、モンゴル出身の元幕内力士・白馬関。店内には関取時代の写真が飾られていた。これまで何度か内モンゴル(中国の内モンゴル自治区)の料理店は行ったことがあるが、外モンゴル(モンゴル共和国)の店は初めてだ。この日はいなかったが、同郷の力士も頻繁に訪れているらしい。

モンゴルビール 750円

まずはモンゴルビール(750円)で乾杯。モンゴルの都市名「カラコルム」という銘柄だ。モンゴル語だと「ハラホリン」と発音する。甘みとコクが特徴的なダークエールだった。

ウランバートルサラダ 650円

店名を冠したウランバートルサラダ(650円)は、ピーマン・人参・キュウリのピクルスを使った品。ただし、うーれんさんによると現地では野菜はあまり食べないらしい。肉と小麦が主体で、野菜はじゃがいも・人参・玉ねぎなどが主だそうだ。ビタミンは馬乳酒や後述するミルク茶から摂るようだ。

シャルビン 1個 250円

シャルビン(1個250円)は肉餡を挟んだ薄焼きパンだ。発音からすると中国の「焼餅(シャーピン)」から転じたのかな。サクッとした生地の中には旨味溢れるひき肉餡が詰まっている。モンゴルには夏に「ナーダム祭」という行事があり、男性が競馬・弓・相撲の腕前を競う。うーれんさんは、その祭りに出店するシャルビンの屋台が毎年楽しみだったという。

ボーズ 1個120円

モンゴルの蒸し餃子、ボーズ(1個120円)。これは中国語の「包子(パオズ)」そのもの。小籠包にそっくりで、皮の中は肉汁たっぷり。モンゴルでは日常的に食べられているらしい。スイートチリソースが添えられてきたが、本来は何もつけないとのことなので、自分はそのまま食べた。

骨付き羊肉の塩茹で 3人前・3800円

そしてメインディッシュ。どーんと大皿に盛られてきたのは骨付き羊肉の塩茹で(3人前・3800円)。モンゴル語で「チャンサンマハ」。モンゴル料理といえば、これだろう。迫力満点の盛り付けにテーブルがざわついた。

本来は一番年長の男性が肉を切り分けます

モンゴルではその席で一番年長の男性が骨から肉を切り分けるそうだが、今回は案内人のうーれんさんが切り分けてくれた。モンゴルの男性はみんな、マイナイフを持っているという。細かな解説付きで、めっちゃためになる。

味付けは岩塩だけ、羊の風味が際立つ

一口大に切り分けられた羊を頬張る。味付けは岩塩だけというシンプルさだが、かえって羊の肉の風味が際立つ。特に脂が美味い。「美」は「丸々と太った羊」を表した漢字というが、確かにポジティブな意味を持たせたくなる。「善」「義」「祥」。羊は偉い。

味付けは岩塩だけ、羊の風味が際立つ

一緒に茹でられているじゃがいももホクホクだ。頬張るとつい顔がほころんでしまう。塩気が足りなければ一緒に出されたスープや、テーブルの岩塩を使おう。めちゃめちゃ硬いので削るのが大変だけどね。

長い記事なのでここでうーれんさんから出題された遊牧民クイズ! 何百頭もの羊の群れが2つ混ざってしまいました。羊には所有者がわかる印がありますが、何百も確認するのはとても手間が掛かります。どうやって分ければいいでしょう? 正解は記事の最後に。

ラムスペアリブ 1本 650円

続いてラムスペアリブ(1本・650円)。柔らかく調理されていて食べやすい。「ジューシーに焼き上げました」とメニューに書いてあるが、むしろ茹でている風の味わいだ。うーれんさんに確認したところ、モンゴル共和国(外モンゴル)では、鉄板にしろ直火にしろバーベキュー的な調理方法を見たことがないという。

捌いた羊を大鍋に入れ、焼いた石を入れて蒸し焼きにする「ホルホグ」という料理はある。また、Youtubeで串焼きの動画も公開されていたりはする。しかし少なくとも彼女は煮るか茹でるかした料理ばかり食べてきたそうだ。香辛料もほとんど使わない。

日本生まれのジンギスカンは、もちろんモンゴルにはない。内モンゴル出身者の中華料理店で供されているクミンを使った串焼きも、他地域から伝来したスタイルだろう。

ウランバートル メニューの一部

そして私の目当て、ツイヴァン(Цуйван/Tsuivan)! 羊肉入り、850円。メニューには「モンゴルの焼うどん、うどんは平打ちで、味付けは塩味」と書かれている。これを食べてみたかったのだ。

ツイヴァン(羊肉入り) 850円

平打麺と羊肉・人参を炒め、みじん切りの青ネギを散らしてある。味付けはこれも岩塩のみ。ただ、羊の脂が甘みやコクをもたらしてくれ、あとを引く味わいだ。現地ではもっと脂っこく、特に男性に好まれる料理だそうだ。

麺は平たい切り麺、味付けはやはり岩塩のみ

こちらでは麺をモンゴルから乗り寄せているが、うーれんさんは自分で麺から作るそうだ。ただし、とても手間が掛かるらしい。小麦粉の生地を伸ばし、表面に油を塗ってから畳むようにロールする。それを蒸してから切るという。

彼女のレシピとは生地に玉子を使う点で少し異なるが、こちらの動画が参考になる。ウイグルやウズベクほか中央アジアで食べられるラグマンは手述べ麺だ。それに対してモンゴルでは、蒸して切りそろえる切り麺だったとはとても意外だ。興味深いなー。

バンタン 790円

バンタン(790円)というスープ料理も食べてみた。羊のスープにひき肉と小麦粉生地の小さな欠片が入っている。手の平を水で塗らし、小麦粉をつけて両手を擦り合わる。するとポロポロ細かな小麦の生地の欠片が落ちる。それを具にしたスープだ。モンゴルでは離乳食に食べるらしい。

ミルクティ(カップ) 150円

締めにミルクティ(カップ150円)。スーテーチェー。岩塩が入っていてほんのり塩っぱい。毎朝必ず飲み、これでミネラルや各種栄養素を補給しているそうだ。日本人にとってのお味噌汁のような存在と教えてくれた。モンゴルの文化を具体的に解説してもらいながらの食事会、案内してくれたうーれんさんに感謝感謝である。

ちなみにぐるなびの公式ページによると、ウランバートルは4/7から22まで改装のため休業らしいのでご注意を。また、うーれんさんから毎年GWに練馬区光が丘公園で開催されるイベント「ハワリンバヤル」も勧められた。今年は5/4と5/5。私はすでに予定が入ってるので行けないが、興味のある方はぜひご参加を。

さて、途中で出したクイズ。混ざった羊の群れの分け方について。同じ群れに属する羊を5・6頭だけ選び、そのグループを離れた場所へ移動させる。すると群れの他の羊もみんな着いてきて、キレイに分離できるそうだ。羊たち自身は自分のいる群れの仲間をちゃんと把握しているんだねー。面白いなー。