Temakeria e Cia, Top Center Shopping

諸外国と同じくブラジルでも日本料理の筆頭と言えば寿司(Sushi)。なかでも独自に発展を遂げているのが「手巻き(Temaki)」だ。

ブラジル初日の夜、知人の知人の日系人セルジオ真保栄さんに、東洋人街リベルダーデをご案内いただいた。セルジオ真保栄氏はブラジルのファストフード・パステウの店を経営していて、リベルダーデにも店舗を構えている。

その夜ラーメン屋のあと、2軒めにお連れいただいたのが、リベルダーデで40年営業している「寿司吉(Sushi Amigo)」。日本の伝統的な正統派の寿司を提供しているお店なのだが、あえてブラジル式の「Temaki」をお願いした。小さめサイズでも片手で持つのがやっとなほどのボリューム。これがブラジルスタイルの「Temaki」だ。

前々回、焼きそばメインの飲食店「ヤキソバテリア(Yakisobateria)」を紹介したが、それと同様に手巻きがメインの「テマケリア(Temakeria)」もブラジルで増えつつある。2006年に創業した「Temakeria e Cia」もその一つ。サンパウロやリオデジャネイロにチェーン展開して、高評価を得ている。

パウリスタ大通り、トップセンタービル

パウリスタ大通り沿いにあるデパート「Top Center Shopping」にも、「Temakeria e Cia」の支店がある。また、この建物には在サンパウロ日本国総領事館も入っている。ちなみに”Cia”はポルトガル語で”Companhia(会社、商会)”の省略形らしい。直訳すると「テマケリアと会社」なのかな?

Temakeria e Cia, Top Center Shopping

「Temakeria e Cia」を訪れたのは平日11時過ぎのこと。店舗は一階の奥、突き当りにあった。フロアにはテーブル席が多数。開店直後で先客は誰も居ないが、後から何組か入ってきた。

Temakeria e Cia 店内の様子

テーブルの上に置かれている醤油はSakura醤油のトラディショナルとライト。ゴマと照り焼きソースも卓上に置かれている。壁の女形は坂東玉三郎かな。これが実は結構いい年のおっさんだなんて、客のほとんどは思ってもいないだろうな。

壁には梅沢富美男の女形姿

注文したのは手巻きをひとつとお茶、そして海鮮焼きそばだ。焼きそばはメニューに3種類載っていた。野菜焼きそば(Yakissoba de Legumes)はR$20.90、牛肉焼きそば・鶏肉焼きそば(Yakissoba de Carne/Frango)はR$23.90。

Temakeria e Cia Yakisobaメニュー

一方、海鮮焼きそば(Yakissoba de Frutos do Mar)はR$49.90! 日本円で約1500円。なんと他の焼きそばの倍以上の高価格だ。ブラジルでいろんな料理を食べたが、総じて肉類より魚介の方が高かった。

キュウリの酢の物とレモンティ

お通しはきゅうりの酢の物。普通に美味しい。お茶(Cha)はリプトンのレモンティーが出てきた。甘い紅茶だ。これは失敗、寿司に合わない。ただ沖縄の食堂っぽくもある。

手巻きはかなりでかい

注文した手巻きは「Temaki do Mau Ⅱ(R$22.40)」。サーモンとシメジをクリームチーズで和えて、カットしたエビフライをトッピングした手巻き寿司だ。かなりの大きさで、手で持つと重さで形が崩れるため、箸で食べ進めた。別の小皿で出されたワサビをちょっと付け、Sakura醤油を適量垂らして、まず一口。ふむふむ、美味い。

Temaki do Mau Ⅱ R$22.40

クリームチーズと魚介+醤油は以外な組み合わせだけど、実は相性が良い。日本にも居酒屋で塩辛とクリームチーズを合わせている店がある。エビフライのカリッとクリスピーな食感も良いアクセントだ。醤油じゃなくて、テリヤキソースを掛ければ写真的にもっとよかったかも。

Yakissoba de Frutos do Mar R$49.90

続いて海鮮焼きそば。Yakissoba de Frutos do Mar。ここのはあんかけスタイルだ。蕎麦用の丼で提供される点が面白い。使われている具はイカ、エビの剥き身、キャベツ、白菜、人参、モヤシ、ブロッコリー、玉ねぎ。刻んだ青ネギがトッピングされている。麺はストレートな太麺。チャンポン麺ぽいモチモチ・シコシコした食感だ。

チャンポンに似たシコシコ食感のストレート麺

餡の味付けは醤油ベースでかなり濃い味。しょっぱいが、海鮮の旨味が滲みている。これまでの焼きそばと違って麺自体が美味しく、味付けにも深みを感じる。片栗粉やコーンスターチによるトロミはなく、海鮮醤油あんかけ焼きそばのイメージとはだいぶ乖離している。

食べ進めるとチャンポンぽく感じる

食べ進めるうちに麺と器、つゆだくのせいで、なんとなくチャンポンに思えてきた。辛さはないけど、韓国のチェンバンチャジャンに通じる味わいで、かなり気に入った。手巻きと焼きそばで食べ切れるか心配だったが、どちらも期待以上に美味しかったこともあり、難なく平らげることができた。

お会計はR$87.12、日本円で約2,420円

ただし昼飯にしてはだいぶ高く付いた。お会計はR$87.12。日本円で約2,420円。まあ、せっかくはるばるやってきたブラジルだ、ケチケチしても仕方あるまい。

ところであんかけスタイルがブラジルで普及した経緯については、2017年7月11日付のニッケイ新聞に「サンパウロ州の都市・スザノがきっかけになった」という内容の記事がある。

数年前、スザノ文協のスキヤキ祭りを取材した折り、「餡かけヤキソバはスザノから広まった」との話を現地役員から聞いた。

(中略、スザノ文協の昼食会で)婦人会の与那嶺武子元会長(86、二世)にヤキソバ発祥の地というのは本当かと質問すると、「もう40年以上前の話でしょうか。まだ現在の会館が建つ前―。製麺所の広谷さんが婦人部にヤキソバの作り方を教えて下さったのが始まり。それまで当地ではヤキソバは見たこともありませんでした」と滔々と語り始めた。

(中略)

同地に工場を構える広谷製麺所。初代経営者は、かつて文協会長も歴任したといい、同地域の日系社会のために尽力してきた人物だ。もともと一家は日本でも製麺所を営んでいたといい、日本でヤキソバ作りの講習を受け、販路拡大のためにそれを婦人会に伝授したという。

ニッケイ新聞 2017年7月11日
大澤航平「スザノから全伯に広がるヤキソバ発祥の地の誇り — 製麺所と文協がタイアップ」より引用

2017年の40年前というと、1977年だ。東洋市(Feira da Liberdade)で中国人が焼きそばを売り始めたのが1973~1975年頃だから、せいぜい2~4年。「当地ではヤキソバは見たこともありませんでした」というのも頷ける。

記事に登場する広谷製麺所の焼きそば麺はブラジル全土に流通している。実際にリオ・デ・ジャネイロのスーパーマーケットでも見かけた。やや太めでパリパリの揚げ麺だ。

広谷製麺所の焼きそば麺

スザノ市の広谷製麺所は、なぜソース焼きそばではなく、揚げ麺の焼きそばを選んだのか。前傾の記事では幾つかの理由が挙げられている。

  • 熱いものでなければ、ブラジル人は好まないから
  • あんかけだとすばやく客に提供できる
  • ソースだと、あまり一般的ではなかった中濃ウスターソースが大量に必要
  • あんかけは味付けもコロニアで一般的に使われてきた食材で対応できた
  • 野菜は文協会員が無料で提供してくれるので材料代がかからない

どれも説得力がある理由だが、私なりの考察もそれに加えてみたい。長くなるので次回に続く。