Sukiya Brasil, São Joaquim

2019年5月13日

ブラジル式焼きそば特集、3軒めです。

サンパウロの東洋人街リベルダーデから地下鉄で一駅離れたSão Joaquim(サン・ジョアキム)駅にはすき家がある。日本全国でおなじみ、牛丼チェーンのあのすき家だ。Sukiya Brasilは牛丼以外にカレーやラーメンなども提供している。そして焼きそばもある。

Sukiya Brasil, São Joaquim

Sukiya BrasilのSão Joaquim店を訪れたのは日曜の夜8時半過ぎ。地下鉄駅出口の眼の前にある建物には、ねぶた祭りの山車灯籠が描かれている。なかなかの迫力だ。

Sukiya Brasil, São Joaquim, inside

店内は明るく、壁にはマンガ風の内装が施されている。フロアにはテーブル席が多数あり、9時近くでも結構混んでいた。UserEatsなどの配達も引っ切り無しだ。手近なテーブルに腰掛けてメニューを確認。焼きそばは「YAKISSOBA」と「S」が2つ重なる綴りだ。牛肉、唐揚げ、焼き鳥を乗せた3種がある。

Sukiya Brasil, Yakisoba Menu

すき家イコール牛丼屋のイメージが強いので、ここはやっぱり牛肉焼きそば(YAKISSOBA JAPONES com BEEF)にしておこう。値段はR$20.90、日本円換算で約600円。日本でこれを提供したらもっと安い価格にするんじゃなかろうか。常々感じてるけど、日本の外食は安すぎなんだよなー。

ついでにビールも注文。キリン一番絞り(Kirin Ichiban)が品切れでSTELLAを指定。値段はR$7(約210円)くらいだったかな。ビールはブラジルの方が圧倒的に安いので、飲ん兵衛にはありがたい。他にどんなメニューがあるのか興味のある方は、公式サイトに2016年版が公開されているからチェックしてね。

焼きそばとビールが来ました

5分ほどで焼きそばとビールの小瓶を乗せたトレイが運ばれてきた。早速ビールをと思ったが、栓が開けてない。「すんませーん」と店員さんを呼んで、栓を抜くジェスチャーをしたら、瓶の蓋をガシッと掴んだ。

STELLA, 栓は手で開けられます

「え? 手で空けるの??」と思ったら、クルッと回す。いとも簡単に栓が外れた。なんだよー、スクリュー式かよー。普通の瓶の栓のようにギザギザ付いているけど、それ意味なくなーい?

Yakissoba Japonés com Beef, R$20.90

気を取り直して焼きそばだ。焼きそば自体は具なしで、角太麺だけを炒めてある。味付けはソース味。ちゃんと酸味も効いてる。これは完全に日本のソース焼きそばだ。

具なしソース焼きそばに牛丼の頭、そして生キャベツ

その焼きそばに牛丼の頭が添えてある。玉ねぎはシャキシャキした触感。さらに短冊切りの生キャベツが盛られ、マヨネーズとごま入りのふりかけが掛けられている。脇に紅生姜があるのはいかにも牛丼屋ぽい。

具なしソース焼きそばに牛丼の頭、そして生キャベツ

量はほどよいかちょっと少ないくらい。ビーツのつまみには適しているが、食事とすると少し物足りない程度。キャベツを炒めるのではなく生キャベツをトッピングしてマヨネーズを掛ける点は、厚木・日の出製麺所の「そば焼」っぽいな。牛肉の煮汁でつゆだくなのも特徴的だ。片栗粉でトロミなどはついていないが、結果的に味は濃いめだった。

つゆだくです

ブラジルで何件か焼きそばを食べたが、日本風のソース味だったのはこのSukiyaだけだった。次回以降、日本料理店(テマケリアやSushi Bar)を紹介するが、そこでもソースではなく中華風というか、醤油ベースの味付けばかりだ。前回、ニッケイ新聞の記事を引用して、中国系移民がYakisobaの提供を始めるまでの経緯を紹介した。記事の続きでは、その影響を受けて日系人が焼きそばを提供し始めた流れについても触れている。

日本で一般的な〃鉄板やきそば〃も少数ながら根付いている。

二世の川野パウロさんは日曜日、パウリスタ大通りのフェイラで鉄板やきそばとてんぷらを販売している。川野さんの息子が十七年前、「パウリスタ大通りのフェイラは食べ物が売られていない」ということで始めた。川野さんの親戚、池田きみこさんは七歳で移民した千葉県出身の一世。「日本のやきそばといえば焼いたもの」と自信をもって何皿もやきそばを焼きあげる。

川野流鉄板やきそばは最初、野菜や肉などの具材と麺を別々に炒める。日本式に〃こて(ヘラのようなもの)〃を用いて料理する。味付けは今の日本で主流のソース味ではない。川野さんが数種類の調味料を合わせて作った自家製特性(原文ママ)醤油と塩、油を使用する。焼き上がったら麺を皿にのせ、最後に野菜をかける。仕上がりは広東風炒麺に似ている。風味は中華風に近い。片栗粉を使用しないので、さっぱりしている。

ニッケイ新聞 2002年5月22日/庄司智子『日本食フロンティア 食の移住史(7) やきそば 2 いま流行? 福建風-日々新しい食に変化』より引用

記事はさらに次のように続く。

昼食時には、多種多様な人がひっきりなしに訪れる。非日系人ソニアさんは「鉄板で焼いたやきそばの方が、自然な感じで好き」とフェイラの常連になっている。

今の日本で一般的な〃ソースやきそば〃は日本で考案された、日本人の舌に合わせた料理だ。本場の中国は醤油を基本に、オイスターソース、塩などで調味する。川野さんのやきそばは日本式調理法と中華の味を融合させた、ブラジル生まれの新しい食といえる。

世界各国の料理はブラジルに持ち込まれて日々新しい料理に変化し、たくさんの人を楽しませている。やきそばもその一例にもれていない。ブラジルと日本のやきそばは中国に原点をもつ。各国の好みと環境が微妙に異なる新たな食文化を生み出した。〃やきそば〃が百年後、さらに斬新な姿で存在している可能性は誰も否定できない。

この記事から、パウリスタ大通りのフェイラで日系人が提供する焼きそばの特徴を、箇条書きで書き出してみよう。

  • 最初、野菜や肉などの具材と麺を別々に炒める
  • 味付けは今の日本で主流のソース味ではない
  • 数種類の調味料を合わせて作った自家製特性(製)醤油と塩、油を使用
  • 焼き上がったら麺を皿にのせ、最後に野菜をかける
  • 仕上がりは広東風炒麺に似ている、風味は中華風に近い
  • 片栗粉を使用しないので、さっぱりしている。

パウリスタ大通りのフェイラ

実はパウリスタ大通りのフェイラへも足を運んだ。すでに満腹で食べる余裕がなかったが、見た感じではたしかにこれらの特徴を満たしていた。食べてみたかったなあ。胃袋のキャパがもっとほしい。

ところで「日系人の焼きそばイコール上記のスタイル」というのなら話はわかりやすいのだが、そうでもない。あんかけタイプの焼きそばも日系人は提供している。次回はその辺を紹介しよう。