サイフォン (東京都江戸川区)

タイの焼きそば特集の2週目は、パッタイとは異なる太さのライスヌードルを使った焼きそばをご紹介します。麺だけでなく味付けも全く違うんですよ。


小岩のタイ料理店、サイフォン。前々回に紹介したバーン・タムのタムさんがかつて在籍した店のひとつで、某口コミサイトのタイ料理部門で全国1位という超人気店だ。料理も当然タイ・イサーンがメイン。しかしなんというか、そういう謳い文句が霞んでしまうほどの個性的な店である。

小岩 タイ料理 サイフォン

訪問したのは3月下旬、日曜の夜9時過ぎ。屋号の「サイフォン」はタイ語で「雨筋」を意味するそうだが、たまたまこの日も雨だった。JR小岩駅から5分ほど歩いて到着。派手な外装の店舗だが、中の様子が全く分からない。とりあえず入ってみる。

サイフォン 店内の様子

入ってびっくり、内装は完全にキャバクラ、いやキャバレーのそれ。フロアは広く、大小のボックス席が10卓ほど配置されている。天井からはミラーボールが吊るされ、ステージには大きなカラオケ用のモニターとドラムセットが置かれていた。人気店なのだが、日曜の夜のこの時間でしかも雨。さすがに先客は7~8人のグループ1組と、カップル1組だけだった。

シンハービール 700円

着席して、とりあえずシンハービール(700円)とヤム・タクライ(レモングラスのサラダ/1200円)を注文。すぐに運ばれてきたビールをぐっと煽る。隣席のグループは多国籍な女性たちで、カラオケを始めたがっているが「9時半からだからもう少し待って」と店員さんに断られていた。なるほど、もうすぐ始まるってことか。そっかそっか。

ヤム・タクライ(レモングラスのサラダ) 1200円

ヤム・タクライ(ยำตะไคร้)はタイ東北部・イサーン地方で普及している料理だ。「ヤム(ยำ)」が「和える」、「タクライ(ตะไคร้)」は「レモングラス」で、レモングラスのサラダのこと。レモングラスは長ネギに似た形状のハーブだが、かなり繊維が硬くそのままだと食べづらい。サラダ(ヤム)にする場合はその繊維を断ち切るよう、みじん切りにする。

レモングラスのみじん切りのサラダです

サイフォンのヤム・タクライは、たっぷりのレモングラスと赤玉ねぎ、挽肉、エビ・イカ・ホタテのシーフードを和えたもので、パクチーがトッピングされていた。酢っぱめの味付けで唐辛子も利かせてある。レモングラスの爽やかな風味も相まって、甘酸っぱ辛く美味しい。いかにもイサーン的な品だ。シーフードも大ぶりで良い。

サイフォン メニューの一部

ヤム・タクライがだいぶ減ったころに、瓶ビール(アサヒ)と本日の目的の品=パッシーユ(1200円)を注文した。パッシーユ(ผัดซีอิ๊ว/Pad See-ew)はタイ王国の焼きそばの一つで、ここのメニューでは「パット・シィーユー」「醤油味焼きそば」と表記されていた。

パット・シィーユー(醤油味焼きそば) 1200円

パッシーユとパッタイとの一番の違いは使っている米麺にある。パッタイは先週紹介した通り、センレック(เส้นเล็ก)という2~3ミリほどの太さの平たいライスヌードル(クイッティオ/ก๋วยเตี๋ยว)を使っているが、パッシーユはさらに幅広い、きしめんに似たライスヌードル=センヤイ(เส้นใหญ่)を使う。食感もきしめんに似てモチモチしている。

麺は幅広のセンヤイを使用

具は鶏肉、玉子、白菜、小松菜が使われていた。さらに味付けもかなり違う。パッシーユの「シーユ(ซีอิ๊ว)」はタイ語で「醤油」のこと。当然味付けは大豆を原料とするシーユーカオ(ซีอิ๊วขาว/タイの醤油)やシーユーダム(ซีอิ้วดำ/黒醤油=ダークソイソース)がベースとなる。この店では「ナムマンホイ(น้ำมันหอย)」≒オイスターソースも加えてあるのか、塩気に旨味と甘味が加わっている。唐辛子は使われておらず辛味は無し。あっさりしていて焼きうどんぽい味わいだ。鶏肉と玉子だから親子焼きうどんとも呼べる。

鶏肉と玉子を使った親子焼きうどん的な品

見た目も味も、香港や広州などで食べられている干炒河粉や、マレーシアのチャー・クェイティアオととてもよく似ていて、パッタイ以上に中華料理の影響が色濃いという印象を受けた。恐らくパッタイよりも日本人には馴染みのある味わいだろう。最近は置いているタイ料理店も増えているし、エスニックが苦手だけどタイ料理店に来てしまった、という方にオススメしたい。

夜9時半以降はカラオケ解禁

食べているうちに9時半を過ぎ、フロアの照明が落とされた。間をおかずに隣のグループによる日本語、英語(フィリピン人もいる)、タイ語、韓国語が入り乱れる国際的なカラオケ大会が始まり、ステージの周りで踊りだした。タイ人らしき女の子がおいでおいでしているけど、照れくさくて遠慮してしまった。なんだこのカオスな空間は。これが明け方まで続くのか。

料理の味以上に店の雰囲気に飲まれつつお会計。3800円。客はカラオケに夢中でシェフは厨房から出て一休みしていた。人の良さそうな笑顔だ。それにしても面白い空間だなー。今度は遠慮せず、ステージまで行って一緒に踊ってみようかなと思う。

サイフォン

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ヌアサヤム (東京都新宿区)

今回紹介するのは歌舞伎町にあるヌアサヤムというタイ料理店。前回紹介したバーン・タムと同じく、店主(女将)はタイ東北部のイサーン地方の出身らしい。クンプーさんカレー細胞さんの記事を読み、そのディープさを確かめに行ってみたくなった。

歌舞伎町 タイ料理 ヌアサヤム

訪れたのは2月上旬、平日の21時半過ぎ。場所は風林会館の斜向かいを少し東に歩いた辺り。歌舞伎町でもこの辺りは特別に濃厚な雰囲気を醸している。外観の写真を撮る場合も、変な人や物が写らないように気を付けねばならぬ。

ヌアサヤム 入口

看板を頼りに二階へ登ると「ヌアサヤム」と書かれたドアが現れた。「ヌア(เหนือ)」は「北」、「サヤム(สยาม)」は「シャム」=「タイ」で、屋号は「タイ北部」を意味している。ちなみに「イサーン(ภาคอีสาน)」は「東北」を意味していて、タイの中でも北部とは別地域だ。

ヌアサヤム 店内の様子

「サワディークラーップ」と挨拶しながら入店。「サワディーカー」と女将さん。客席は6人掛けのテーブルが6卓ほどで先客なし。タイカラオケ&飾りつけが無意味に派手で、「うわあ、タイだー」って感じ。いやあ、期待通りの店だ。凄いなー。

生ビールはアサヒスーパードライ

とりあえず生ビールと「ソムタム(ส้มตำ/1500円)」を注文。この店のソムタムは「タイ風(ソムタム・タイ)」と「イサーン風(ソムタム・イサーン)」がある。

「この、ソムタム・イサーンはサワガニ入り?」
「うんうん、ソムタム・プーね」
「じゃ、それください」
「辛いの大丈夫?」
「はい、大好き!」
「オッケー!」

やがて厨房からゴツゴツと専用の鉢で食材を潰す音が聞こえてきた。注文から15分ほど生ビールを呑んでいると、「お待たせー」と一見ヘルシーなサラダ風のお皿が運ばれてきた。

ソムタム イサーン 1500円

「ソムタム(ส้มตำ)」は青パパイヤを使ったサラダで、日本のタイ料理店でも良く見かける定番メニューだ。「ソム(ส้ม)」は「酸っぱい」、「タム(ตำ)」は「搗(つ)く」を意味し、細く切ったパパイヤや生のインゲン、薬味などを専用の鉢で搗きながら混ぜ合わせて調理する。ヌアサヤムのソムタム・イサーンはパパイヤ・インゲンのほか、人参・ニンニク・唐辛子、そして塩漬けのサワガニ(プーケム/ปูเค็ม)が使われている。これが女将の言ってた「ソムタム・プー(ส้มตำปูเ)」だ。

サワガニの塩漬け(プーケム)が味の決め手

見た目はヘルシーだが、赤いのはトマトでは無く生の唐辛子なので、相当な辛さがある。それに加え、塩漬けサワガニの癖のある臭いのせいでタイ人でも苦手な人が多いらしい。しかし個人的には、ガツンとくる辛さが気に入った。発酵させた魚(プラーラー/ปลาร้า)を加えた「ソムタム・プー・プラーラー(ส้มตำปูปลาร้า)」ってのも店によってはあるらしい。いつか試してみたい。

豚皮の素揚げ「ケープ・ムー」

ちなみにソムタムの付け合せは串切りキャベツと、豚肉の皮をカリカリに素揚げした「ケープ・ムー(แคบหมู)」。上板橋のフィリピン料理店・カバヤンで食べた「チチャロン・バボイ(Chicharon Baboy)」を思い出す。東南アジアではきっとポピュラーなスナックなのだろう。

チャーンビール(BEER CHANG)

ソムタムのボリュームが思いのほか多く、あとはチャーンビールとパッタイ(1200円)で締めることにした。チャーンビール(Beer Chang)はシンハービールに比べると知名度は低い。私も飲むのは初めてだが、雑味が多く、なんかピンと来ない味だ。うーん、シンハーの方が好みだな……。

ヌアサヤム メニューの一部

そしてパッタイ(ผัดไทย/Pad Thai)。この店では「海老入り焼きビーフン/1200円」と紹介されている。英語表記は「Fried Noodle in Thai Style」。太麵のセンヤイ(เส้นใหญ่)を使った「パットシーイーウ(パッ・シーユ/ผัดซีอิ๊ว/Pad See-ew)」もあるが、それは次回、別の店の記事で紹介しよう。

パッタイ 1200円

パッタイの麺は米が原料のクイッティオ・センレック(ก๋วยเตี๋ยว เส้นเล็ก)。玉子と剥きエビ、干しエビ、砕いたピーナッツ、モヤシを一緒に炒めてある。小さな干しエビと生の韮をトッピングし、脇にレモンと唐辛子が添えられていた。前回紹介したバーン・タムは唐辛子が見当たらなかったが、同じイサーンでも微妙に違うようだ。そぼろ状のトッピングは何だろう? 食べてみたが分からず。ひと口にパッタイと言っても、店によって微妙な差異があるのが面白い。

パッタイ独特の食味が良い

味付けはタマリンドの酸味がベースで、やはりかなり甘い。エビや玉子、ナッツの旨味に、柔らかいけど伸びやかなセンレック独特の食感が良い。量も結構ある。レモンや唐辛子をアクセントで加え、渾然一体となった複雑な味わいを楽しい。最後の方は唐辛子を全部混ぜたのだが、ちょっと辛くし過ぎた。いかんいかん。

唐辛子(プリックボン)は適量で!

ところでタイ料理店ではテーブルに調味料が4つ置かれていることが多い。これはタイ語で「調味料」を意味するクルワンプルーン(เครื่องปรุง)と呼ばれ、通常はタイ料理の味付けの基本となる甘・酸・辛・鹵の4つの要素を代表する砂糖(ナムターン/น้ำตาล)、魚醤(ナムプラー/น้ำปลา)、唐辛子(プリックボン/พริกป่น)、お酢(ナムソム/น้ำส้ม)が用意されている。調理の際は砂糖の代わりにパームシュガーやココナッツシュガー、お酢の代わりにライム(マナオ/มะนาว)やタマリンド(マカーム/มะขาม)を使うことも多い。ソムタムもパッタイも、これら四味のバランスを考えて調味されているのだ。自分で味を調える際も、そのバランスを意識すると良いかも知れない。

ソムタムとパッタイですっかり満腹になったところで、お会計。ビールと合計でちょうど4000円。歌舞伎町にこんな穴場のタイ料理店があるとは嬉しい誤算だった。イサーン本来の辛さを存分に堪能して、胃が悲鳴を上げている気がする。翌朝のトイレが怖いなあ。

ヌアサヤム

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バーン・タム (東京都新宿区)

サイフォン」「いなかむら」「インター」。どれも食べログで高評価を得ているタイ料理店だが、これらの店には共通点がある。実はどの店もとあるシェフが在籍したことがあり、彼が腕を揮うことで本場の味の人気店になったという。そのシェフの名はタムさん! タイ東北部イサーン地方出身、同じ店には1年といない流浪の天才料理人だ。

新大久保 セントラル大久保ビル

そのタムさんが、昨年8月1日に満を持して自分の店をオープンした。場所は新大久保で、屋号は「バーン・タム(Baan Tum)」。タイ語で「タムの家」を意味する。前回のロムアロイのママはタイの首都・バンコク出身だったが、イサーン地方のパッタイがどんな品かを確かめるために訪れてみた。

タムさん、恰好いい!

セントラル大久保ビルの入り口に置かれている看板も「伝説のシェフ! タムさんのレストラン」という煽りとキメ顔の写真で、ここが「タムの家」であることを思いっきりアピールしている。素晴らしい。店はビルの地下の一番奥にある。店舗の壁にもタムさんのキメ顔があるので分かりやすい。

新大久保 タイ料理 バーン・タム

前回紹介したロムアロイと同じく、この店も人気店で飛び込み入店はなかなか困難だ。何度か寄ってみたがいつも満席で断られた。偶々空いていて入店できたのは3月上旬の平日夜、4度目の訪問のこと。どうしても来たければ電話予約すれば済むのだが、大人数で食べると料理に集中できないってのが難点なのよね。1人予約してパッタイだけってのも店に申し訳なく感じるし。

生ビール 490円

客席のキャパは30人ほどで、この日は半分埋まってた。残りもほぼ予約席だそうで、本当にギリギリで入ることができた。とりあえず生ビール(490円)で一人乾杯。銘柄はサッポロ黒ラベルだ。

カエルのニンニク揚げ 1500円

ツマミに注文したのはカエルのニンニク揚げ(1500円)。タイ語だと「コップ・トート・ガティアム(กบทอดกระเทียม)」。「コップ(กบ)」はカエル、「トート(ทอด)」は「揚げる」、「ガティアム(กระเทียม)」はニンニクを意味する。タイ東北部イサーン地方は山間部で海が無いため、魚介系はナマズ(プラー・ドゥック/ปลาดุก)などの川魚やカエルを使った料理が多い。

鶏肉と白身魚の中間のような肉質

バーン・タムではカエルの足に少し胴体が付いたものが4本揚げられていた。ニンニク揚げとあって、かなりニンニクが効いている。カエルはこれまで何度か食べたことがある。鶏肉と白身魚の中間のような肉質で、割りと好みの味だ。胴体の部分は小骨が多いが、味に癖がないので、フライドチキン感覚で食べられる。

このドレッシングがヤバい

この料理で目を見張ったのがサラダに掛けるドレッシングだ。青唐辛子がガツンと効いていて、峻烈な辛さが味わえる。さすがイサーン出身のスターシェフ、インパクトが凄い。大人数でコースを頼み、ラープやソムタムなどイサーン地方のもっと辛い料理を食べてみたくなった。

バーン・タム メニュー

そして目的のパッタイ(ผัดไทย/Pad Thai)。メニューでは「タイ風焼きそば」とも表記されていて、価格は1100円。ビールのお代わりのついでに注文した。

パッタイ 1100円

平たい中細のライスヌードル=クイッティオ・センレック(ก๋วยเตี๋ยว เส้นเล็ก)と、玉子・干しエビ・ピーナッツ・ニラ・モヤシを炒めてある。トッピングは赤い干しエビと生モヤシ。ピーナッツをトッピングに使うのは見かけるが、麺と炒めるというのは日本人には無い発想だ。焼きそばに応用しても面白いかも知れない。

麺とピーナツを炒めているのが面白い

味付けはタマリンド(マカーム/มะขาม)の酸味、ナンプラー(ナムプラー/น้ำปลา)の旨味と塩っけ、砂糖(ナムターン/น้ำตาล)の甘みの3要素。味付けにもトッピングにも唐辛子(プリックポン/พริกป่น)は見当たらない。タイ料理の中でもイサーン地方の味付けは辛いことで知られているが、実はパッタイは辛くなく、むしろ甘すぎるほどの味付けなのだ。タイ・イサーンと、メコン川を挟んだ対岸のラオスとは料理も似通っているそうだが、そういえばラオスの焼きそばも甘かったっけ。

あまめの味付けが印象的

モチモチと伸びやかなコシのあるライスヌードルに、甘味・酸味・塩味・旨味がバランス良く滲みている。玉子やエビの風味も良く、レモンを絞ると爽やかさが増してさらに美味しい。辛いものが苦手でもこれならきっと気に入ってもらえそうだ。わざわざこれほどの人気店で食べるメニューでは無いのかもしれないが、タイ料理好きや焼きそば好きならイサーンスタイルのパッタイを一度は食べておくのも良いだろう。

ポーションが多目なので2品ですっかり満腹になってしまった。ビール2杯を加えてお会計は4080円。伝説のシェフ、タムさんの本領を味わうなら、やはり大人数でコースを頼むのが良いだろう。辛い物好きを募って再訪したいなー。そうそう、少し離れた大久保駅の近くに2号店のバーン・タム2も昨年末オープンしたらしい。そちらではランチでパッタイを提供しているようだ。そっちも一度訪れてみたい。

バーン・タム

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ロムアロイ (東京都中野区)

今週から4週に渡ってタイの焼きそばを特集いたします。タイ料理に詳しいクンプーさんのブログなどを参考に、時間を掛けて名店を食べ歩いてみました。タイの焼きそばもいろいろ種類がありますが、まずはやはり「パッタイ」ですよね。今週は3つのタイ料理店のパッタイをご紹介します。


タイ風焼きそばとして知られるパッタイ(ผัดไทย/Pad Thai)は、米粉が原料のライスヌードル(クイッティオ/ก๋วยเตี๋ยว)を炒めた焼きそばだ。「パッ(Pad)」はタイ語で「炒める」を意味する。タイの国民食とも呼ばれているが、国民食と呼ばれるのは理由がある。

時は1940年代、第二次大戦の頃。小麦の輸入を抑え、米の増産と消費を促すために国としてメニューを考案し、首相自らがキャンペーンを行ったのがそもそもの始まりだ。当時、国名が「タイ王国」に変わって間もなかったこともあり、国名「タイ(Thai)」を含んだ「パッタイ(Pad Thai)」という名前を付けたそう。その後全土に普及して、名実ともにタイ王国を代表する料理となった。焼きそば好きとしては感無量のエピソードである。

東中野 タイ料理 ロムアロイ

さて、そのパッタイを食べに訪れたのは東中野にあるタイ料理店、ロムアロイ。タイ人のママが一人で切り盛りする、カウンター10席程度のこじんまりした店だ。屋号はタイ語で「おいしい風」を意味する。営業しているのか分からないような目立たない外観だが、実は食べログのタイ料理部門で全国2位という超人気店。タイから直輸入したフレッシュなハーブを惜しげもなく使うことに定評がある。

ロムアロイ とある日のメニュー

コース以外に提供しているメニューは日替わりで2〜3品のみ。水やビールはセルフサービス。その日、何があるかは運次第なので、何か食べたい料理があるなら気長に通うか、コースを予約する際に希望を伝えるしかない。しかも後述するがこの店の予約はとても難しい。パッタイが食べたい私は気長に通う方を選択した。ようやく念願が適ったのは5回目の訪問だが、たぶんこれでも早い方だと思う。

ロムアロイ 店内の様子

麺はもちろんライスヌードル。タイのライスヌードル=クイッティオは太さで区分されていて、きしめんくらい幅広いセンヤイ(เส้นใหญ่)、2~3ミリの太さのセンレック(เส้นเล็ก)、ビーフン並みに細いセンミー(เส้นหมี่)の3種がある。一般的なパッタイに使われるのはセンレックだ。タイでは生麺を使うそうだが、日本では入手困難なのでロムアロイでも乾麺を水で戻したものを使用している。

パッタイ(Pad Thai) 1200円

センレックと一緒に炒められている具は、剥きエビと玉子。ピーナッツや干しエビ、ニラも入ってる。トッピングにたっぷり干しエビ、シャキシャキのモヤシ、砕いたピーナッツ(トゥアリソン/ถั่วลิสง)。そして生のニラ。串切りのレモンと乾燥させた唐辛子(プリックポン/พริกป่น)が添えてある。

干しエビや唐辛子、レモンを添えて

味付けは自家製の調味料を使用。乾燥させたタマリンド(マカーム/มะขาม)を水で戻し、ココナッツ(マプラーオ/มะพร้าว)と魚醤(ナムプラー/น้ำปลา)を加えて長時間煮込んだものだそうだ。これに随分と手間が掛かるため、予約などでリクエストがあった時だけパッタイを作るらしい。ロムアロイでパッタイが食べたいときはその直後を狙わねばならぬのだ。

モチモチのセンレックが美味しい

その自家製調味料に加え、炒める際に砂糖(ナムターン/น้ำตาล)で甘味を付けている。さらにロムアロイでは唐辛子で辛味も加えていた。実はこの辛さに驚いた。パッタイは辛くないのが一般的で、激辛で有名なイサーン地方のパッタイなどはむしろ甘すぎるほどだ(後日紹介予定)。しかし、こちらでは唐辛子でかなりしっかり辛くしている。ママはバンコク出身だが「辛くする方が美味しいから」とのこと。イサーンと対照的で興味深い。干しエビの旨味やピーナッツの香ばしさがそれに重なり、モチモチの米麺に様々な食材の味が滲みて、まるで万華鏡のようだ。とても美味しいパッタイだった。

シンハービール1本(600円)と合わせて、この日のお会計は1940円。暑い季節には辛口のパッキー・マオもやるらしいので、それも食べに来なきゃだな。この店に通う間にパッタイ以外のメニューもあれこれ食べたが、どの料理もみな格別に美味しかった。その一部を紹介しておこう。

ラープ 1500円

こちらは初訪問でいただいたラープ(ลาบ/Larb)=挽肉のサラダ。タイの東北地域イサーンの名物料理で、以前ラオスでも食べたことがある。ロムアロイでは豚肉をママが自らミンチにしているそうだ。かなりの辛さなのだが辛いだけではなく、きらびやかな味と香りが素晴らしい。パクチー(ผักชี)にコブミカンの葉(バイ・マックルート/ใบมะกรูด)、ミント(サラネー/สะระแหน่)などのフレッシュハーブをふんだんに使用。さらにスパイスの風味も加わり、それぞれの香りが結晶のようにキラキラ煌めいている。初訪問だけに鮮烈な味わいだった。

ガパオライス 1500円

直近で食べたガパオライス(Ka-Prao Rice)も素晴らしかった。肉はやはり自家製ミンチ。ザル一杯のホーリーバジル(ガパオ/กะเพรา)の葉を挽肉と一緒に炒めてある。トッピングに生の葉もたっぷり添えてあり、爽やかな香りと刺激的な辛さは未体験の美味しさだ。付け合せのジャスミンライスも香りが素晴らしく、タイ料理で求めている美味しさの到達点はこういうことなのかと唸らされた次第である。

最後に予約について。この店の予約はかなりハードルが高い。一見さんは不可で何度か来た人に限られ、電話やメールではなく来店して予約しないとダメ。もちろんキャンセル厳禁。過去に心無いドタキャンが重なったそうで、仕方なくこのようなシステムになったらしい。席数も限られているため、飛び込みで入店するのもなかなか難しい。もし訪れる際は代わりのお店の候補も考えておくことをオススメしたい。

ロムアロイ

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【ラジオ出演】4/24 ニッポン放送「垣花正 あなたとハッピー」

ラジオ出演のお知らせです! 先日に続いて、ニッポン放送さんです!

4月24日の月曜、ニッポン放送で午前中に放送されている「垣花正 あなたとハッピー」に電話出演します! 出演予定は朝9時半から数分程度。第4次焼きそばブームについて簡単に解説する予定です。月曜の朝からお耳汚しで恐縮ですが、良かったらお聴きくださいませ~。

【出演番組】 垣花正 あなたとハッピー@ニッポン放送
【放送日時】4/24(月) 8:00~11:30
【出演予定時間】9:30から数分間の予定
【公式サイト】http://www.1242.com/radio/happy/

垣花正 あなたとハッピー

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千里香 池袋店 (東京都豊島区)

この記事が当ブログのお店紹介、900店目になりました! 我ながらコンスタントによくぞ続けたものです。たぶん年末に1000件には到達すると思いますが、今後ともご贔屓くださいますよう、よろしくお願いいたします。


千里香という東北料理店が都内に何軒かある。店によって系列は違うらしいが、神田鯉風先生のブログでその池袋店に「カリフォルニア焼きそば」なる品があることを知った。中国の東北地方料理なのにカリフォルニア? どういうこと? 沸きあがる疑問符を解消しに訪れてみた。

千里香 池袋店

訪問したのは2月末、日曜の夜20時半ごろ。目指す店は、出会い系などのテナントが入る風俗ビルの7階にある。ビルの前では客引きが道行く人に声を掛け、エレベーターを待つのもそっち系の店が目当ての男性客か、そっち系の店に勤める女性たちばかりで、どうも落ち着かない。

千里香 池袋店 店内の様子

7階でエレベーターを降りると、エレベーターホールではなく、そのまま千里香の店内だった。ボックス席が多数あり、各テーブルに串焼き用の焼き台が設えてある。先客が何組かいるが、会話に耳を澄ませると中国人の率が高そうだ。そしてなぜか背もたれには「美国加州 牛肉面大王」の文字。そう、この店は「千里香 池袋店」であると同時に、「志瑞祥 美国加州 牛肉面大王 東京店」でもあるのだ。

美国加州 牛肉面大王の看板

実は店頭の看板でも同じ屋号がしっかり掲示されている。中国地方菜に詳しい愛吃(アイチー)さんのブログによると、アメリカ(美国)のカリフォルニア(加州)で「牛肉面大王」というチェーンが繁盛し、それが中国に逆輸入されて「美国加州 牛肉面大王」がブランド化した。さらにそれを真似る店も現れるようになり、「志瑞祥」もその後発チェーンのひとつらしい。あー、ややこしい!

難しい話は置いといて、食事に移ろう。とりあえず生ビールだ。お通しはピーナッツ、モヤシのナムル=コンナムル、千切りカクテキ=センチェ。朝鮮半島と地続きな東北地域らしい、無難な組み合わせである。

とりあえずビール

メニューは東北料理や四川料理がメインで、カイコの串焼きやポシンタン=犬肉鍋もある。できれば串焼きを食べたかったが、注文は10本からとのことで断念。なにか見慣れない品は、と探したところ、「たらともやしの出会い(辛口)」なる風変わりな名前のメニューを見つけた。風俗ビルの出会い系メニュー、辛口というのが良い。よしこれにしよう。

たらともやしの出会い(辛口) 1680円

……注文から料理が運ばれてくるまで、たっぷり30分。最初に頼んだビールはすっかり飲み干し、ウーロンハイのお代わりを頼んだころにようやく到着。楕円のさらには茹でたモヤシが敷かれ、その上に焼いた干しダラ、さらに味噌ダレが掛かっている。中国語表記は「明太鱼和豆芽相会」。ハングル表記は「명태, 콩나물 만남(ミョンテ、コンナムル マンナン)」。ちなみにハングル表記がある料理はこの品だけだった。

タラと甘辛味噌とモヤシが合うんです

味噌ダレはコチュジャンベースの甘辛ソース。青唐辛子も種ごと使われていて、なるほど辛口だ。干しダラの歯応えは年初に韓国で食べたノガリ(노가리)を思い出す。タラの旨味にコチュジャンの辛さ、そしてほんのりゴマの香り。シャキシャキのモヤシを絡めると、それらの味わいをしっかりと受け止めてくれる。モヤシ偉い。辛旨い。サイズが大きいので一人だと味に飽きてしまうのがやや難点。

志瑞祥 美国加州 牛肉面大王 メニュー

タラとモヤシをあらかた片付けたところで、目的の品の注文だ。「志瑞祥 美国加州 牛肉面大王 東京店」としてのメニューは、リーフレットで別になっている。看板メニューのカリフォルニア牛肉面は1150円と少々お高め。目的のカリフォルニア焼きそば(加州炒面/880円)には「お勧め!」の文字が入っていた。さてさて、どんな品が出てくるのやら。

カリフォルニア焼きそば(加州炒面) 880円

注文からしばらくして、皿が運ばれてきた。大きな皿の真ん中にちんまり焼きそばが盛り付けてある。パッと見はかなり少な目だ。「広尾でパスタ食べるわけじゃないんだから、こんなお上品でなくても良かろうに」という第一印象だったが、これが大誤算。この皿は中央が大きく窪んでいて、大き目の茶碗ほどの容量があり、食べ進めてみたら思いのほかボリュームがあった。完全に罠だ。

モチモチの平打ち麺&甘辛ソース、なかなか旨し

焼きそばもこれまでにあまり味わったことがないタイプだ。麺は伸びやかなコシの平打ち麺を使用。具は青梗菜・玉ねぎ・モヤシ・人参・キクラゲで肉は使われてなかった。味付けは豆鼓(トウチ)や豆板醤を使った甘辛味。少しケミカルな香りのスパイスも使っていた。メニューの写真では上海炒麺的な品を予想したが、全く違っていた。また味付けが均一でなく、ところどころムラがあるのも大陸らしくて面白い。ムラが嫌な人はよーく混ぜよう。

食べ終えてすっかり満腹。お会計は3682円。「あの焼きそば、カリフォルニアと同じ味なんですか?」とレジで小姐に尋ねたら「あっはっは」と爆笑された。

「私まだカリフォルニア行ったことないから、わかりません(笑)」
「あはは! ですよね〜(笑)」

そりゃそうだろうなあ。これは一度カリフォルニアに行って確かめなきゃ。

というわけで、6月にアメリカ・カリフォルニア州のロサンゼルスとサンフランシスコに行ってきます。主目的は例の如くBABYMETALですけど、あちらの焼きそば事情ももちろん取材してきますのでお楽しみに!

千里香 池袋店

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東北烤羊腿 (東京都新宿区)

JR新大久保の線路脇に東北烤羊腿(トウホクコウヤンテイ)という中華料理店がある。屋号の通り、中国の東北料理を出す店だ。ホームからも看板が見えるのだが、そこに「烤冷麺(烤冷面)」の文字が見える。そう、前回紹介した天天楽と同じく、この店でも「焼き冷麺」を提供しているのだ。しかし、これが全く異なるスタイルだったりする。

東北烤羊腿 ホームからも見える看板

訪れたのは3月中旬、日曜のお昼時。その日は東京タワーで台湾フェスが開催された。メシコレ仲間のぼさのばさんと、そのお連れさんがそのフェスに行ったのだが、あまりの行列の長さで台湾を諦め、東北の誘いに乗ってくださった。中華料理は大人数だといろいろ食べられるのでありがたい。

新大久保 東北烤羊腿

店舗は大勝軒まるいち新大久保店駅の2階にある。一段一段が微妙に歪んでいる狭い階段を登ると、店内の様子が全く分からない殺風景なドアが現れる。心理的ハードルが高いけど、臆せず入店。

まずは生ビールで乾杯

フロアにはボックス席が多数あり。先客はいなかったが、店主夫妻の娘さんらしき小学校低学年くらいのとても元気の良い女の子がウロウロしている。とりあえず窓際に着席して、まずは生ビールで乾杯した。

テーブルには自由に使える香辛料が

「烤羊腿(コウヤンテイ)」を謳うだけあって、各テーブルには焼肉用の設備が整っている。しかし昼から焼肉というのも何なので、他のメニューで攻めることに。ちなみにテーブルの調味料入れには、クミン・胡椒・唐辛子の各スパイスとチリソースも用意されていた。香辛料使い放題ってのは嬉しいなあ。

トウミョウと木耳の和え(豆苗拌木耳) 480円

まずは前菜にトウミョウと木耳の和え(豆苗拌木耳/480円)を。豆苗がシャキシャキで、普段見かける品より葉っぱも大きめだ。酸味を効かせた、さっぱりした味付けで食欲増進。理想的なスターターである。

ホルモンの醤油煮(卤肥肠) 680円

続いてホルモンの醤油煮(卤肥肠/680円)。肉厚なホルモンを甘辛く煮た品で、にんにくダレも付いてきた。とても柔らかく煮込まれていて期待以上に旨い。日本の居酒屋で食べるモツ煮込みに通じる味わいだが、五香粉の風味もあってやはりどこか違うんだな。ビールが進む。

羊肉のクミン揚げ

羊肉のクミン揚げは価格失念。羊肉をカリッと揚げ、ゴマとクミンシードをたっぷり塗してある。羊独特の香りが芳醇なスパイスによって旨味へと昇華している。うんうん、羊とクミンの相性は鉄板だなー。さらにビールが進んでしまう。

干し豆腐と青唐辛子炒め

干し豆腐と青唐辛子炒め。ピーマンに似ているのは中国の青唐辛子、尖椒(ジャンジャオ)かな。一口目の辛さはせいぜい万願寺唐辛子と同程度だが、種も使っているので後からジンワリと辛味がやって来る。幅広の干し豆腐はザラッとしたテクスチャで歯応えあり。ぼさのばさんのお連れさんは「布みたい」とあまりお気に召さない様子だった。

東北烤羊腿 メニューの一部

そしてお待ちかねの烤冷面(1200円)。この店では「焼き冷麺」ではなく「冷麺焼き」と表記されている。事前に口コミサイトで調べたメニューの写真では、前回紹介した天天楽の「烤冷面」とほぼ同じに見えたのだが、出てきた品は似ても似つかない料理だ。

冷麺焼き(烤冷面) 1200円

麺は天天楽と同じく、シート状の冷麺を使用。それを切ってあるのか、千切っているのか、一口大に分割して、玉子・ソーセージ・尖椒(ジャンジャオ)・玉ねぎ・レタスと炒めてある。味付けはラー油と醤油ベースだろうか、スパイシーな甘辛味。モチっとした冷麺がなかなか美味しい。玉ねぎがほぼ生なのも強烈で面白い。

予想外のスタイルの冷麺焼き

使っている素材や味付けは確かに天天楽と似ているのだが、スタイルは全く違う。ぜひ、前回の記事と見比べて欲しい。入口の柱に書かれていた「特色烤冷面」の謳い文句にふさわしい、個性的な一皿だった。

臭い豆腐の揚げ(炸臭豆腐) 880円

もう少し何か食べたいね、と締めに注文したのは「臭い豆腐の揚げ(炸臭豆腐/880円)」。くっさいくっさい臭豆腐を揚げ、串刺しにしてスパイスをたっぷり塗したもの。臭豆腐のこういうスタイルは初めてみた。リクエストしたぼさのばさんはもっと臭いがキツイのを期待していた様子だが、たっぷりスパイスは歓迎していた。

お酒も何度かお代わりして、お会計は一人4000円くらい。目的の焼き冷麺=烤冷面はもちろん、他の料理も色々と個性的な店だった。今度は夜に来て羊肉をじっくり食べてみたいなー。

トウホクコウヤンテイ

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天天楽 (東京都台東区)

今週は中国東北料理店を3軒ご紹介します! 珍品揃いですよー。


中国の東北地域で食べられている「焼き冷麺」を御存じだろうか? 簡体字表記だと「烤冷面(カオレンミョン)」。焼いているのに冷たい麺というややこしい料理である。調べたところ、1990年代に黒竜江の辺りで生まれたストリートフードらしい。

その「焼き冷麺(烤冷面)」だが、実は上野アメ横の天天楽という中華屋台で食べられる。見つけた時には「東京は本当に何でもあるなあ」と驚いた。

上野アメ横 東北料理屋台 天天楽

天天楽を訪れたのは今年の1月上旬、雨の日曜の夜19時半ごろのこと。さすがにこの時間帯になると人通りは少ない。海鮮丼やケバブなどを商っているどの屋台も空いている。ま、こんな雨が降る真冬の夜にわざわざ野外で食事する人間も限られているわなあ。

天天楽 メニューの一部

天天楽は通りの両側に店舗があり、どちらの客席でも同じメニューを頼むことができる。麻辣鍋や干し豆腐、豚モツや鴨の各部位など東北の定番に始まり、かなりマニアックな品々が並ぶ。凉皮(リャンピー)に至っては、東北凉皮と狭西凉皮の2種類もある。なんともディープな店だ。

「ご注文は?」
「生ビールと焼き冷麺、あと肉夹馍(ロージャーモー)もください」

350円という値段に釣られ生ビールを注文したが完全に失敗だった。こんな寒い夜に冷たいビールを煽るのは辛い。

焼き冷麺(烤冷面) 500円

っと、焼き冷麺(烤冷面/500円)が早速運ばれてきた。私は未食だが盛岡のとある店でも焼き冷麺を提供している。しかしこの店の焼き冷麺(烤冷面)は、それとは全く異なるスタイル・味付けなのだ。普通の冷麺と同じくジャガイモや緑豆などのでんぷんが原材料のはずだが、そもそも麺がまるで違う。

シート状の独特な麺

この料理で「冷麺」とされているのは、麺をくっつけた、あるいは切り離していないシート状の生地である。その生地を広げ、玉子やソーセージなどを乗せて焼きあげ、丸めたものが焼き冷麺(烤冷面)なのだ。味付けはスパイシーな甘辛ソース。ひと口大に切り分け、ゴマと香菜もトッピングしてある。基本的な調理手順は、この動画が分かりやすい。

具のウインナーや玉子もジャンクな味わいで良い

食べてみると、これが不思議にちゃんと冷麺ぽい。ツルツル啜るわけにはいかないが、モチモチというかムニュムニュした独特の食感なのだ。歯応えあるデンプンを使ったどんどん焼とでも呼ぶべきか。焦げた部分は固く、ウインナーや玉子などの具と、ピリ辛な味付けが相まってジャンクな味わい深さがある。こんな品が食べられるなんて、アメ横侮りがたし。

肉夹馍(ロージャーモー) 500円

肉夹馍(ロージャーモー/500円)は、狭西省のハンバーガーとして最近少しずつ知られてきた料理だ。この店の肉夹馍は肉だけでなく野菜もゴロゴロ入っていた。馍(モー)≒バンズも厚みがあり、煮汁が滲みてなかなか美味しい。

ビールも飲み終わり、料理もあらかた片付いて、もう一品欲しくなった。寒さを吹き飛ばすべく、土鍋マーラー燙(土锅麻辣烫/600円)と白酒(300円)を追加注文した。

土鍋マーラー燙(土锅麻辣烫) 600円

土鍋マーラー燙は熱々の旨辛鍋だ。注文時に辛さを聞かれ、辛いの大丈夫ですと伝えたので、ほどよい辛さに味付けされている。野菜に春雨、ウインナー。カニカマ・竹輪・ナルトなど、日本的な食材もふんだんに使われている。無国籍なこの街らしくて面白い。

白酒 300円

白酒は「しろざけ」ではなく、もちろんアルコール度数の高い「パイチュウ」の方。有機溶剤を思い出させる香りが妙に癖になるあれだ。プラ製コップ一杯でいい感じで酔うことができた。お会計は2250円。台北の夜市にも似た雰囲気で楽しい店だなあ。また来ようっと。

ちなみに「焼き冷麺(烤冷面)」は韓国にも伝播し、釜山の冨平缶詰市場明洞の屋台通りで「冷麺焼き(냉면구이/ネンミョングイ)」という名前で売られているらしい。1月の訪韓時に探した際には見つけることができなかったが、そちらもいつか食べ比べてみたい。

天天楽

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【Retty】「焼きそばをオカズにご飯」はあり?なし?

Rettyさんに寄稿しました!

「焼きそばをオカズにご飯」はあり?なし? 関東・関西の食文化のヒミツから導く結論はこれ!

「焼きそばをオカズにご飯」はあり?なし? 関東・関西の食文化のヒミツから導く結論はこれ!

焼きそばをオカズにご飯、あなたはあり派? なし派?

そういえばつい先日放送された孤独のグルメの影響で、ちょうどお好み焼でご飯ってのが話題になっていましたね。この辺と併せて読むとより楽しめるかもです。

あり派の方も、なし派の方もご一読くださーい。

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カレーショップ C&C 渋谷店 (東京都渋谷区)

京王グループが運営するカレー専門チェーン、カレーショップC&C。通っていた大学が京王線沿線だったこともあり、新宿本店は学生時代に何度か利用したことがある。その一部の店舗にて最近気になる限定メニューが始まった。その名も「お好みソース・焼きそば&オムカレー」。公式サイトの告知によると渋谷店のほか、明大前店・渋谷店・秋葉原店・笹塚店・府中店・桜ヶ丘店で提供しているそうだ。

焼きそば&オムカレー発売!

昨年、富士そばがカレーライスと焼きそばの合い盛りをやはり店舗限定で提供したが、カレーチェーンから焼きそばへのアプローチも、とても興味深い現象だ。これはぜひ食べて置かねば、と思っていたところ、食べあるキングカレー担当・はぴぃさんもご同行いただけることになった。カレー担当と焼きそば担当、このメニューを食べるにはうってつけの二人である。

カレーショップ C&C 渋谷店

選んだ店舗はC&C渋谷店。場所は渋谷マークシティの北側、道路に面した並びにある。入ってすぐ左手に注文カウンターがあり、すぐ隣が厨房だ。ホールは奥に長く、2人掛けだがテーブルも用意されていた。

「やきそば&オムカレー(680円)をください」
「盛りは普通でよろしいですか?」
「はい」
「辛さはどれに?」
「辛口でお願いします」

カレーショップ C&C 渋谷店 店内の様子

はぴぃさんは同じ品に温泉玉子を付けて注文していた。トレイを持って厨房前で待つ。焼きそばはあらかじめ角型のフードコンテナに1食分ずつ小分けされている。それをレンジで温めていた。予想はしていたが、やはり各店舗で焼きそばを調理するのは難しいんだろうなあ。一方でオムレツはフライパンで注文を受けてから作っている。店舗調理かセントラルキッチン方式か、その線引きが興味深い。

お好みソース やきそば&オムカレー 680円

「お待たせしました」と、渡された皿を受け取る。スプーンと箸もトレイに載せてテーブルへ。丸い皿の半分はカレーに覆われ、残り半分にオムレツと焼きそば、ウインナーが配されていた。オムレツにはマヨネーズ・鰹節・紅生姜のトッピング。皿の端に福神漬けも添えてみる。

焼きそばはオーソドックスなタイプ

ソース焼きそばは細麺を使ったオーソドックスなタイプ。「お好みソース」を商品名で謳っているが、たしかに何となくフルーティ。具は人参のかけらがチラっと見えた程度でほぼなし。富士そばもそうだったが、業務用の出来合いの品っぽさを感じるのは否めない。しかしオムレツは期待以上だ。フンワリ仕上げで、鰹節とマヨネーズが風味を増して、なかなか美味しい。

オムレツの下にご飯が埋まってます

オムレツの下にはご飯が隠れていた。さらっとしたタイプのカレーを、オムレツごとご飯に絡めて頬張る。あー、この味だ。学生時代を思い出す。こういうカレーショップへはめったに来ないが、久々に食べると美味しいなあ。長時間煮込まれ、わずかに固体として残っている肉も良いんだよね。

オムカレーと焼きそばを一緒に頬張る

そしてオムカレーと焼きそばを一緒にいただく。カレーとソース味の相性の良さはこれまで何度も述べたが、やはりこのメニューも両者がマッチしている。鰹節や紅生姜という、普段カレーライスに使わないトッピングも面白い。はぴぃさんの話によると、カレーライスに福神漬けではなく紅生姜をつける店もあるそうだ。横手やきそばの真逆だなあ。

味としての意外性には正直欠けるが、カレーライスの専門チェーンが焼きそばに着目した点を個人的には評価したい。店の方にうかがったところ、4月末か、遅くとも5月一杯までの提供らしいので、スパイシーな焼きそばが好みの方はお早めにどうぞ。……あれ? 前々回の〆と同じになってしまったぞ。ま、いいか。

食べあるキング、カレー担当・はぴぃさんと

はぴぃさん、お忙しい中お付き合いいただき、ありがとうございました! はぴぃさんのブログ、「カレーですよ」もよろしくですよ。

カレーショップ C&C 渋谷店

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陳麻家 さくら通り店 (東京都品川区)

五反田駅の東口に1号店があるせいか、五反田駅の周辺には陳麻家の支店が割と多い。前回紹介した陳麻家・大崎センタービル店もしかり。今回紹介するさくら通り店も五反田駅の西口にある店だ。

陳麻家 さくら通り店

こちらにもランチを探索している最中に偶然見つけた変わり種の焼きそば系メニューがある。訪れたのは2月末。さくら通りという名前に反して、まだ蕾すらない寒い季節のことだった。

陳麻家 さくら通り店 店内の様子

半地下の店舗はこじんまりした造りで、2人掛けのテーブルが多数並んでいた。13時を回っていたが客席は半分ほど埋まっている。小姐(シャオジエ)に促され、入り口脇のテーブルに腰掛けた。

陳麻家 さくら通り店 ランチメニュー

ランチメニューは担々麺など麺類と陳麻飯のセットがメインだ。しかし求める品はこのメニューに見当たらない。

「すみません、店頭にあった『五目麺飯』とかいう品を……」
「あー、そばめしですねー」
「あ、それです」
「そばめし、いっちょー」

陳麻家 さくら通り店 メニューの一部

そう、店頭の看板では「五目麺飯」、また階段の壁には「よくばりそばめし(880円)」という名前で貼りだされていた品が、今回の目的だ。前回と同じく、これもこの店だけのオリジナルメニューらしい。

よくばりそばめし 880円

注文したよくばりそばめしは8分ほどで配膳された。焼いた中華麺と白飯の五目中華あんかけ、要はあんかけ焼きそばと中華丼の合い盛りである。ちなみに伝票には平仮名で「そばめし」と記されていた。

あんかけ焼きそばと中華丼の合い盛り

麺は中細で焦げもしっかりつけられている。ご飯は普通の白飯。中華餡の具は豚肉にうずらの玉子、白菜・人参・フクロダケ・クワイ・キクラゲ・ヤングコーン・小松菜と、バラエティに富んでいる。

しっかり焼かれた麺が香ばしい

味付けは醤油ベースで粘度はほどほど。MSGありありな味わいながらも、塩っぱさと甘みのバランスが良く、麺にもご飯にもいい感じで馴染んでいる。ダブル炭水化物でボリュームもなかなか。カラシや酢で味変するのも楽しい。あんかけ焼きそばと中華丼、両方の味わいが一皿で楽しめる、文字通りよくばり向けのメニューだった。

白飯にも合います

付け合せのスープはモヤシと青菜入りであっさり、さっぱり。デザートの杏仁豆腐で締めくくり。コスパの良さが受けているのだろう、出る頃にはほぼ満席になっていた。人気あるなー。

こういうスタイルの品は十日町市のオガワヤなどでもあったが、それを「そばめし」と呼ぶ点が独特で面白い。同じ陳麻家ですぐ隣の駅なのに、全く異なるメニューってのも油断ならない。訪れる際はお腹を空かしてどうぞ。

陳麻家 さくら通り店

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【Retty】Rettyに直訴して「焼きそば」検索機能を追加してもらった話

実名口コミNo.1 グルメサービス Rettyさん。急成長中の有名サイトに、今回直訴してジャンルに「焼きそば」を追加していただきました! でも作業は結局自分でやることに……(マジです)。ぜひご一読くださーい!

Rettyに直訴して「焼きそば」検索機能を追加してもらった話

Rettyに直訴して「焼きそば」検索機能を追加してもらった話

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陳麻家 大崎センタービル店 (東京都品川区)

先週のとある平日のこと。ランチを食べにJR大崎駅のすぐ北に位置する大崎センタービルを訪れた。目黒川のほとりには桜が咲き誇り、春の陽気に誘われたのだろう、花見がてら散歩する人々で賑わっている。

目黒川沿い 大崎センタービル

外と同じく、ビル内もやや混雑気味だった。ピークタイムは過ぎているはずだが、2階にある目的の店の店頭には行列ができている。わざわざ並ぶのも億劫なので他の店にしようと周りを見渡してみると、とある中華屋の看板が目に留まった。

陳麻家 大崎センタービル店

店は陳麻家の大崎センタービル店。ご飯に麻婆豆腐を掛けた「陳麻飯」を売りにする中華チェーンで、五反田駅の東口にある1号店を1度訪れたことがある。

陳麻家 大崎センタービル店 店内の様子

店の中を覗いてみるとフロアにはテーブルが多数並び、天井から提灯が下がっている。空席もあった。よし、ここにしよう。

焼・担々麺 リーフレット

ランチメニューは担々麺と陳麻飯のセットを推しているが、私の目的は店頭の看板で宣伝されていた「焼・担々麺」だ。「担々麺を焼くと旨くなる」というコピーが気に入った。

「ご注文は?」
「焼・担々麺(800円)とミニ陳麻飯(250円)をください」

店員さんに訊いたところ、「焼・担々麺」はこの店だけのオリジナルメニューで、4月一杯の期間限定商品とのこと。調理に手間が掛かるのだろう、注文も13時以降に限られている。実際、注文から配膳までに10分近く掛かった。

焼・担々麺&ミニ陳麻飯

焼・担々麺は中華鍋で焼き目を付け、さらに熱々の鉄板に盛り付けてある。麺の周りは豚骨スープと芝麻醤・マー油をベースにしたタレで囲まれ、挽肉を味付けした肉味噌とゴマ、刻みネギがトッピングされていた。

焼・担々麺 800円

カリッと焼き上げられた麺に熱々のタレと肉味噌を絡めて頬張る。香ばしいゴマの風味が口の中に広がり、そのあとから肉味噌の旨味と辛さが追いかけてきた。

カリカリの麺に担々スープが絡んで辛旨い

焦げた麺が鉄板に張り付いてやや食べにくいが、焦げた風味もまた一興。熱々で、辛旨で、日本で一般的な汁あり担々麺や、麻辣を売りにする本格的な四川風の汁なし担々麺とも異なる面白い味わいだ。「お好みでお掛けください」と渡されたラー油や四川山椒も合う。

ミニ陳麻飯 250円

白飯を麻婆豆腐で覆った陳麻飯も安定の美味しさ。シンプルながら看板メニューだけのことはある。ちなみに陳麻家は今全国で60店ほどあり、ルーツは同じだが、オーナーはバラバラ。陳麻飯一つとっても、店ごとに味付けが違うそうだ。

お会計は1050円。担々焼きそばはこれまで何度か食べたことがあるが、こういうつゆだく気味のスタイルは初めてだ。たまたま見つけてラッキーだった。前述した通り、提供は4月一杯らしい。スパイシーな焼きそばが好みの方はお早めにどうぞ。

陳麻家 大崎センタービル店

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【ラジオ出演】4/10~14 ニッポン放送「あさナビ」

ラジオ出演のお知らせです!

ニッポン放送で早朝に放送されている「ENEOSプレゼンツ あさナビ」に、来週の月曜から金曜まで毎日出演します! ナビゲータは女優の黒木瞳さん! 以前、某TV番組でも明かされてましたが、実は焼きそばが大好物なんだそうです。今回は私がおススメする焼きそばも実際にいくつか食べていただきました。みなさま、ぜひ早起きしてお聴きください~!

【出演番組】 ENEOSプレゼンツ あさナビ@ニッポン放送
【放送日時】4/10(月)~4/14(金) 6:43 – 6:49
【公式サイト】http://www.1242.com/radio/asa/asanav/

ニッポン放送 あさナビ

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金龍 (岐阜県岐阜市)

東海地方で食べ歩いた焼きそば特集。最後は名古屋を離れ岐阜市から。前回前々回と硬い焼きそばが続いたので、締めは柔らかな中華系焼きそばをご紹介しよう。

長良川と金華山、頂上には岐阜城

岐阜市街の北側、岐阜城を頂く金華山。その脇を流れる長良川からほど近い住宅街に、金龍という中華屋がある。創業60年に及ぶという老舗で、安くてボリュームたっぷりと地元で評判の店だ。

岐阜市 純中華料理 金龍

3月中旬、土曜日の昼下がりに訪問。店舗は鄙びた感じの渋い雰囲気。客席はコの字カウンターが15人分ほどと、二人がけのテーブルが何卓か。中途半端な時間帯だったが先客が数組いた。ちょうど入れ違いで客が帰ったばかりの左手カウンターに腰掛ける。

金龍 メニューの一部

メニューには街中華でおなじみの品々が並んでいる。しかし漢字表記が独特だ。例えば焼きそばは「揚州沙麺」。火偏の「炒」ではなく、なぜか「さんずい(氵)」の「沙」なのだ。店内に人気ランキングが貼り出されていて、焼きそばや両面焼きそばもランクインしていた。一番人気はヤキメシだが、焼きそばのファンも根強いようだ。

「焼きそば(揚州沙麺/800円)ください」
「はい、焼きそばね」

金龍 店内の様子

注文を受けた店主は年季の入った中華鍋をガス台にかざして、手際よく調理してゆく。建物こそ古びてはいるが、水回りやフードはちゃんと清潔に保たれていた。ご飯を炊飯器でなく、白木のおひつで保存している辺りに、この店のポリシーを感じる。

「はい、おまたせ」

はやっ! 出来上がるまでに3分程度しか掛かっていない。さすがの職人芸だ。

揚州沙麺(焼きそば) 800円

麺は細めの中華麺。具は豚肉、鶏肉、キャベツ、玉ねぎ、人参、タケノコ、キクラゲ。肉厚なしいたけも入っていた。そして見ての通り、かなりつゆだくなのだ。

麺はかなり柔らかめだ

味付けは塩ベースで、凾館の鳳蘭を思い出させる風味だ。麺と具を炒め煮しているため麺はかなり柔らかい。デンプン質が溶け出してスープにはトロミもついている。見た目以上に濃厚な味わいだ。

濃厚な味わいのつゆだく焼きそば

仕上げに白コショウをパッパッと掛けていて、それも良い塩梅に効いている。熱々な上にボリュームもあり、食べてる最中に汗だくになってしまった。清流・長良川のおかげなのか、お冷がまた美味しい。身体を冷やすために2度ほどお代わりしてしまった。

肉厚のシイタケも嬉しい

「ごちそうさま、美味しかったです」
「おおきにー」

会計を済ませて店を出る。個性的で満足度の高い一皿だった。それにしても他の焼きそばもどんな品なのか気になる。手打沙麺(特製焼きそば)、廣東焼麺(両面焼きそば)、揚麺(揚そば)……。店主はだいぶご年配のようだったが、いつかまた来れるよう末永く続いて欲しいなあ。


というわけで東海地方の焼きそば特集、いかかでしたでしょうか? 焼きそばのニューウェーブがこのエリアまで広がっていることを実感できる旅でした。まだまだ行ってみたい宿題店がありますので、そのうちまた行かねば。地元の皆さんもぜひ訪れてみてくださーい。

金龍

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