芳野屋

2014年3月22日

ウインズ=中央競馬の場外馬券売り場の近所には土日に競馬中継をTVで流す飲食店が多い。前回紹介した渋谷の店もそうだし、浅草のホッピー通りも有名だ。その浅草の花やしき入り口の右隣にある大衆食堂・芳野屋もそんな店の一つ。昭和20年の終戦から二代に渡り営んできたという老舗の食事処である。

浅草花やしき隣 芳野屋

訪れたのは今年の1月下旬、日曜日の午後3時半過ぎ。浅草寺から西に伸びる花やしき通り沿いで芳野屋はすぐ見つかった。良い感じに鄙びた店構えだ。

芳野屋 店頭の食品サンプル

かっぱ橋が近いせいか、店頭に商品サンプルが置かれているが、食欲に及ぼす効果としては無いほうが良いかも知れない。ソース焼きそばなんて、品名が無いと食べ物かすら怪しまれる。見なかったことにしよう。

店内に入るとスポーツ新聞を手にした先輩方4人ほどがテレビの競馬中継を凝視していた。メインレースの出走時間が近いので、前のめりになる気持ちも何となく分かる。テーブルが6卓あって、それぞれ1卓ずつに分かれて腰掛けていた。

「いらっしゃいませ」

入り口に一番近いテーブルに腰掛けてた人の良さそうなおばちゃんが店主の様だ。立ち上がって席を片付け「こちらへどうぞ」と促された。

芳野屋 メニュー

壁のメニューがこれまた時代を感じさせる。定食類から麺類、酒肴までバラエティに富んでいる。観光地でもある浅草にしては価格も比較的安い。

「ご注文は?」
「ビールの大瓶(600円)と焼きそば(500円)を」
「ビールはキリンとアサヒがありますが」
「じゃ、キリンで」

ビールとタンブラーがすぐに運ばれ、おばちゃんは奥の厨房へ。先輩方はレースが進展するたびに2・3言、会話を交わしている。

「お待たせしました」

楕円形の中華皿にシンプルながらも美味しそうな焼きそばが盛られてきた。

焼きそば 500円

麺は中太で柔らかめ。具はモヤシ、キャベツに玉ねぎ、ベーコン少々。そして紅生姜のトッピング。味は薄めでやや油っ濃いが美味い。素朴な味なのにコクがある。「よかったら」と渡されたソースを掛けると、風味が増してますます美味い。ビールに合うしボリュームも丁度良い。店頭のサンプルからの想像を裏切られた。勿論、良い意味でだ。

焼きそばを肴にビールを呑みながら私も競馬中継を観続けた。皆、口数が少ないが、こういう雰囲気は嫌いではない。レースがひとつ終わるたびに「こっちお勘定で」と先輩方が減って行く。丁度ひと段落着いたところで私もビールを飲み干してお勘定。最後のレースはダークホースが勝利を収め高配当が付いたようだ。最後に残ってた先輩のひとりがニコやかに一言話かけてきた。

「万馬券、取りたいねー」
「そうですねー(笑)」

ごちそうさま、と店を出る。「浅草って、やっぱりいい町だな」と、何となく感じた。


さて、公営競技場とその周辺の焼きそばをご紹介してまいりました。この流れで浅草など下町界隈を皮切りに、東京で暖簾を守る老舗のソース焼きそばを次回からご紹介しようと思います。

芳野屋

店舗情報TEL:03-3841-5173
住所:東京都台東区浅草2-29-3
営業時間:日によって変動あり
定休日:不定休
主なメニュー焼きそば 500円
中華そば 500円 タンメン 600円
カレーライス 500円 玉子丼 500円
親子丼 700円 かつ丼 800円
おでん 500円 煮込み 400円