高田やきそば店

2021年11月22日

千葉県北部から茨城、栃木、埼玉、群馬にまたがる一帯には、焼きそばなどのコナモノを供する専門店や駄菓子屋が点在している。『北関東焼きそば文化圏』とも呼ぶべき現象なのだが、ほとんどの店は普段地元民だけを相手にしているため、他地域にはあまり知られていない。メニューは地域や店によって特徴があり、今回紹介する栃木・群馬、いわゆる両毛地域では「ポテト入り焼きそば」と呼ばれる、ジャガイモが具の焼きそばが普及している。

足利市 高田焼きそば店

栃木県足利市にある高田やきそば店。おばちゃんが一人で切り盛りしてる店で、地元の人たちの電話注文で昼過ぎには売り切れてしまうという人気店だ。訪れたのは三月中旬、平日の午前11時。足利駅の東側、渡良瀬川の風を感じる住宅街にその店はあった。地元足利が誇る月星ソースの幟が店頭に翻っている。現場仕事の昼食用だろうか、トラックが乗り付けて10食分ほど持ち帰るところだった。

入店してポテト入り400円を注文。湯呑みで出された暖かい緑茶を啜って待ちながら店内を眺める。メニューは焼きそばとみそおでんのみ、席は4人掛けのテーブルが二つだけで薬味や調味料もない。実にシンプルだ。

焼きそば ポテト入り400円

やがて陶製のお皿に盛られた焼きそばが登場。たっぷりのキャベツにホクホクのポテト。紅しょうがと青海苔がトッピングされている。麺は普通の太さだが、心持ち柔らかめか。程よい味付けで食べ飽きない濃さだ。並のサイズでも食事として十分な量である。

「今日は暖かくなりましたね」と話し掛けられ、天気から花粉症の話題になったついでに、根掘り葉掘り伺ってしまった。

「私が生後十ヶ月の頃に母が店を始めてね、今年で五十三年目(!)」
「使ってるのは男爵いも。無いときは地芋を使うけど少し味が落ちるのよね」
「新じゃが切り替えの時期は味が染みなくて……でも美味しいけどね(笑)」
「んー、あと10年か15年は出来ると思う。継いで欲しいけど、強制はできないわね。作る方が楽しくやってないと、お客さんにもそれが伝わっちゃうから」

「作るほうが楽しくないと、お客さんにも伝わっちゃうから」

なるほど、ポテトに染みているのはソースだけではなさそうだ。母娘2代・五十余年、地域の人たちに愛されている理由が少し分かった気がする。

高田やきそば店

店舗情報TEL:0284-42-2242
住所:栃木県足利市錦町11
営業時間:10:00~18:00
定休日:第1月曜日
主なメニュー焼そば350円
ポテト入り400円 卵入り400円
ポテト卵入り450円 肉入り450円
肉ポテト入り500円 肉卵入り500円
ミックス550円 大盛150円プラス
みそおでん一人前300円