東洋水産本社 マルちゃん焼そば3人前

2017年12月9日

当ブログの焼きそば店紹介記事も今回で999回目。1000回を目前に控えたこの機会に、どうしても取り上げておきたい焼きそばがある。1975年(昭和50年)に発売され、いまや全国の家庭に普及している、東洋水産の「マルちゃん焼そば3人前」だ。身近な焼きそばというとカップ焼きそばを思い起こす人が多いが、このチルド商品の影響力が過小評価されている気がしてならない。

マルちゃん焼そば 3人前

マルちゃんとは、去る8月に東洋水産さんがスポンサーの札幌テレビ『どさんこワイド』に出演させていただいたご縁がある。また、先日発売された光文社「フラッシュ(FLASH)」に寄稿した『焼きそば革命100年史!』と題した文章でも、「マルちゃん焼そば3人前」を取り上げたばかり。せっかくなのでこの機会にと直接取材を申し込んでみたところ、ありがたいことに快諾してくださった。個人ブログとしては、恐らく異例な対応だろう。

東洋水産 本社ビル

そして先日、品川の東洋水産本社にお邪魔し、お話を伺ってきた。受付で名前を伝えると、通されたのはマルちゃん製品がずらっと並ぶ会議室。壁にはマルちゃんのトレードマーク。この部屋、テレビで見たことある気がする。NHK「あさイチ」の撮影で使われた部屋かな。

マルちゃん製品がズラッと並ぶ部屋にて

広報担当の山本さんと名刺を交換して早速インタビュー開始!

塩崎「はじめまして。今日はありがとうございます」
山本「こちらこそ、弊社商品を取り上げてくださってありがとうございます」
塩崎「『マルちゃん焼そば3人前』は子供のころから食べていたこともあり、実は前々からいろいろとお伺いしてみたかったんですよ」
山本「そうなんですね、ありがとうございます」
塩崎「まず、あまり知られていませんけど、『マルちゃん焼そば3人前』って日本で一番売れている麺類なんですよね?」
山本「はい、POSデータによると、そうなんです!」

日本一売れているマルちゃん焼そば

こちらこちらのサイトで、全国のPOSデータ(商品の売上実績データ)を分析したランキングが公表されていて、私も実は随分と前から個人的にチェックした。それによると生麺・チルド麺だけでなく袋めんやカップ麺を含めた「麺類」というジャンルで、年間で最も売り上げが高いのが「マルちゃん焼そば3人前」なのだ。

さらに細かく見ていくと、いろいろ興味深いこと気付く。例えば5月から9月くらいまでの期間は「揖保乃糸」に抜かれて、2位に甘んじる。暑さに加えてお中元のシーズンということもあるだろう。また年末の短期間は年越しそばの需要が伸びて、同社のカップそば「緑のたぬき」が1位になったりする。ただ、それらを勘案しても、一年を通してみれば「マルちゃん焼そば3人前」の売り上げは断トツと呼べるほど高い。

いわば日本で一番食べられている麺が、東洋水産の「マルちゃん焼そば3人前」なのである。ラーメンやスパゲティより焼きそばが売れているとは、私もちゃんと調べるまで思ってもみなかった。

塩崎「しかも『マルちゃん焼そば』はテレビでのCMを一度も打ってない、っていうのが凄いですね」
山本「はい。当社でも『赤いきつね』『緑のたぬき』『マルちゃん正麺』などドライ製品(=乾麺)は、ご存知の通りテレビCMを打っているんです」
塩崎「ですねー、よく拝見しています」
山本「一方で『マルちゃん焼そば』など、チルド製品は一切テレビに出稿していないんですよ」
塩崎「あー、ドライとチルドという区分で、戦略に違いがあったんですね!」
山本「当初は小売店の店頭で実演販売などを通じて認知を広め、現在に至ります」
塩崎「なるほど、美味しさが地道な販売と口コミで広まったって感じですね」

お土産にいただいた非売品の下敷き

1975年(昭和50年)、当時の家族構成を基準にした3人前1パックで売り始めて以来ほとんど味は変わっていない「マルちゃん焼そば」。ただもともとは単に「焼そば」という商品名で、「マルちゃん焼そば」という商品名に落ち着いたのは、2012年と意外に最近のことだそうだ。「焼そば」時代は一般名詞の「焼きそば」と区別しにくいため、社内では「さんやき」と呼ばれていたという。「3人前の焼きそば」が「さんやき」の由来だろうとは思うが、そこは定かではない。

塩崎「実は私もこれまで食べ歩いていて、居酒屋や喫茶店などで『マルちゃん焼そば』を使うお店が何軒かあったんですよ。中には焼きそば専門店もあったりして」
山本「えー、そうなんですか!?」
塩崎「で、訊いてみると『食べ比べた結果、マルちゃん焼そばに落ち着いた』『他が割引していてもマルちゃんの方が美味しいから』と仰るお店が多いんです」
山本「わー、嬉しいですね! ありがとうございます」

マルちゃん焼そばはベースの麺がしっかりしているため、あれこれアレンジしても受け止めてくれる点も支持される理由だろう。独自にひと手間工夫しているという人も多いし、いろいろな味や極太麺など商品のバリエーションも増えている。また、東洋水産が監修したマルちゃん焼そばレシピの本もある。

マルちゃん焼そばレシピ

塩崎「マルちゃんの焼きそばというと、『やきそば弁当』『焼そばバゴォーン』など、カップ焼きそばは地域限定商品が割と多いですよね」
山本「そうですね、たしかに」
塩崎「チルド麺の焼きそばにも、そういうローカルな地域限定商品て、あるんですか?」
山本「はい。九州・沖縄限定では『ちゃんぽん麺焼そば』、また中国・九州で『瓦焼そば』という商品を販売しています」
塩崎「えー、知らなかった! ちゃんぽんと瓦そばですか。面白いですねー」

ちゃんぽん麺焼そば&瓦焼そば

塩崎「そういえば、富士宮やきそばなど、ご当地焼きそばのチルド麺ってマルちゃんでは見かけないですね」
山本「ええ。『マルちゃん焼そば』のシェアが既に高いので、チルドのご当地焼きそばを新たに販売しても……」
塩崎「ああ、自社の似たような商品同士が競合してシェアを奪い合う、俗にいう『カニバる』ってやつですね」
山本「そうなんです。特に富士宮やきそばのある静岡は、北海道と並んで特にシェアが高い地域なので」
塩崎「なるほど、新商品をわざわざ投入する必要性がないんですね。納得です」

マルちゃんだしの素 鰹あじ

静岡が話題に上ったところで、商品棚に陳列されていた「だしの素 鰹あじ」へと話が移った。私の母が味噌汁などを調理するときは、必ずこれを使っていた想い出の品だが、「西伊豆町で作っています」という右上のコピーに、この場で初めて気が付いた。そっか静岡で作られていたのか。広報の山本さんも静岡のご出身で、やはりこの「だしの素 鰹あじ」が定番だったとのこと。東京ではあまり見かけないけど、こういうところでもマルちゃんの味になじんでいたんだなあ……

塩崎「マルちゃんというと、海外の商品展開も盛んですよね。メキシコでは 『簡単にできる』『すぐできる』という意味合いで『Maruchan』という言葉まで生まれたとか」
山本「そうですね。ドライ製品だけでなく、『マルちゃん焼そば』も海外で販売しています」
塩崎「あ、ローマ字の『NAMA YAKI-SOBA』ですね! ニュージーランドの食料品店で見た覚えあります! 冷凍庫に入っていました。いつもの味が世界中で食べられるってのは嬉しいですねー」

輸出用マルちゃん焼そば

山本「それと最近はインドでも会社を作って、『A&M』というブランドで乾麺の販売を始めました」
塩崎「へー、インドで即席麺というと『マギー』さんが競合相手になりますね」
山本「面白いのが欧米だと即席麺はあくまでもスープが主体で、麺はスープの具という位置づけなんです。それがインドだと、スープ麺より焼きそば的な商品の方が売れるんですよ」
塩崎「ほー! 言われてみれば、インドではチャウメンなど焼きそば系の麺料理はありますが、スープで食べる習慣はないですね。面白いなあ」

海外で展開するドライ製品

インド特有の手食文化が関係しているかも知れないが、それでもスープはあるものなあ。地域によってそういう差異があるってのは、世界的な企業ならではの知見だなと感心してしまった。

塩崎「最後になりますが、今年の8月8日、『マルちゃん焼そばの日』では札幌TV『どさんこワイド』さんでお世話になりました」
山本「いえいえ。こちらこそ、ありがとうございました」

STVどさんこワイドにて

塩崎「ところで東洋水産さん以外にも『8月8日は焼きそばの日』と仰っている方がいるって、ご存知でした?」
山本「え? そうなんですか? やはり『焼(8)く』『焼(8)く』から?」
塩崎「それが、まるしょうという焼きそば専門店の関口社長と仰る方なんですけどね……」

こちらの記事の内容を説明したら、とても興味を持ってくださった。

山本「へー、面白いですねー!」
塩崎「ぜひ、『マルちゃん焼そばの日』という枠をさらに広げて、『焼きそばの日』としてアピールしていただけると私としては嬉しいです(笑) 今後も一緒に焼きそばを盛り上げましょう!」
山本「はい!(笑)」

マルちゃんのブランドマーク、かわいいですよね

インタビューのついでに、こちらから伝えたいこともあれこれ言えて気が済んだ(笑) 取材を快く受けて下さってありがとうございました。

ソース焼きそばを語るうえで外せない東洋水産『マルちゃん焼そば3人前』。日本を代表する焼きそばの一つとして、これまで以上に注目していきたい。

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