急行食堂

2017年2月15日

木古内駅前 急行食堂

函館から松前方面に約40km。JR江差線の木古内駅は、青函トンネルを抜けるJR津軽海峡線の終点でもある。その木古内駅の目の前にあるのが「名代やきそば弁当」の看板を掲げる急行食堂だ。

弁当と名乗っている通り、調理した焼きそばを箱詰めにしてテイクアウトでき、もちろん電車(店主は汽車と言ってたが)内にも持ち込める。創業以来55年前もの間、鉄道で北海道と本州を往き来する旅人たちのお腹を満たしてきたメニューである。(北海道限定販売のカップ焼きそば、東洋水産『やきそば弁当』との関連性は不明)

訪れたのは7月初旬の平日。10:15に入店。客席はカウンター5席にテーブル4つに小上がり1卓。「いらっしゃいませ」と声を掛けた年配女性が店主だろう。テーブル席に腰掛けてお茶を啜りつつパンを食べていた。

「すみません、やきそば食べたいんですけど、大丈夫ですか?」と尋ねてみたが、「早くお店を開けたらお客が来ちゃったわね、ちょっと食べ終わるまで待っててね」と笑いながら、おばばはパンを食べ続ける。こちらとしては一向に構わないのだが、なんだか面白い。食べる品は事前に決めてきたのだが、一応メニューを眺めて最終的な検討を重ねる。

メニューには色々掲げられているが、現在はやきそばのみ

「やきそば弁当とやきそばは中身は同じですか?」
「一緒一緒」
「ではやきそばを一つ」
「並で良いの? 男の人は大体大盛頼むわよ?」
「いえ、食べ歩きなので」

それにしても、このおばばが喋る喋る。丁度昨日が誕生日で83歳になったということから始まって、ご家族のこと、病歴のこと、ご近所のこと、マスコミ掲載のこと。まあ色々と話してくれた。メニューにはラーメンや御飯も載せてるが、今は焼きそばだけしか作ってないそうだ。営業開始時間も当てにならなそうな雰囲気である。

パンを食べ終わって話も一段落し、私にも温かいお茶を注いでくれ、ようやく焼きそばの調理のために厨房に入ったのは、入店してから20分も経ったころ。中華鍋で威勢よく炒める音が聞こえてきた。

やきそば(並) 700円

やがて、「急行食堂」のロゴ入りの皿に盛られて焼きそば登場。見た目からして普通の焼きそばと違う。麺はやや細めの縮れ麺で柔らかめ。色合いから予想される通り、ソースは使われてないとのこと。具は人参、長ネギ、玉ねぎ、モヤシ、シイタケ、白菜、豚肉にカマボコ。味付けは濃くないが脂がたっぷり使われていて、コッテリしてる。全体の量はほどほどだが、具と麺の割合が半々程度で、沢山の野菜を摂取できる。卓上にはソースや七味、コショウなどが置いてあるが、そのまま食べて十分美味しい。津軽海峡を渡ったらこうまで変わるのか、味も具も全てが独特な焼きそばである。

全国にファンも多く、この焼きそばを食べるためだけに鉄道でやってくる人もいるらしい。しかし駅前の開発工事で数年以内には、この場所を立ち退かなくてはならないとのこと。歴史ある名店が惜しまれつつ無くなるのは実に寂しい限りだ。なんとか移転先と後継者を見つけてこの味を残して欲しいものだが、83歳という年齢には酷だよな……

※2013.08.26 追記
北海道新幹線開業に伴う駅前整備で一時は閉店も取り沙汰されましたが、200mほど離れた場所に移転して営業を続けられているそうです。(参考記事)

急行食堂

店舗情報TEL:01392-2-2055
住所:北海道上磯郡木古内町本町532
営業時間:10:00-21:00(?)
主なメニューやきそば 並700円 大1000円
名代やきそば弁当 並700円 大1000円