HK Diner

2016年5月20日

ロンドンの焼きそば特集。締めはSohoにあるチャイナタウンから!


中華料理店・食材店が軒を連ねるロンドン・Sohoのチャイナタウン。「世界一接客態度が悪い店」として知られる「旺記(Wong Kei)」もこのチャイナタウンにある。イギリスはかつて香港を領有していただけあって、ここの料理店は香港系が多い。そのうちのひとつ、HK Dinerを今回は取り上げたい。

China town, Soho, London

事前にロンドンで行きたい店を選んでいる最中、この店のメニューに気になる品があった。いまはWeb Archiveでしか見れないが、2012年頃のメニューにその品が載っている。拡大してみよう。

HK Diner 2012年ごろのメニュー

気になったというのはこの一番上、焼きそば類(Fried Noodle or Ho Fun)のカテゴリにある「葡汁焗猪扒意大利粉」。英語表記は「Spaghetti Classic」=スパゲティ・クラシック。「猪扒」はポークチョップ、「意大利粉」はスパゲティのことなのはわかる。しかし「葡汁焗」がさっぱりわからない。中華料理店でスパゲティというのも意味不明だし、しかもこの店自慢の品らしいからさらに困惑は深まる。どうにも気になるので行って確かめることにした。

HK Diner, Soho, London

訪問したのはロンドン滞在2日目、平日の夕方。辿り着いたWardoor Streetには、大きな門が立っていた。位置的には「朱雀門」に相当するのかな? その門から中華街に入ってすぐ、右側2軒目に目的の店はあった。看板の漢字表記は「荷李活」=Hollywood。調べたらハリウッドロードというのが香港にあるらしく、それにちなんだ店名のようだ。

HK Diner 店内の様子

入ってすぐ左では北京ダックなどをローストしている。奥に広い造りで、フロアには丸や四角のテーブルが多数並んでいた。屋号の通り中華レストランというよりはダイナーというか、丸テーブル以外はカフェ風の内装だ。先客もちらほら。

入り口に近い席に案内され、「キャッシュオンリーだけどいいか?」との質問。イギリスは完全にクレジットカード社会で自分も現金はあまり持ち歩いていなかった。「手持ちの金額で足りるかな?」とざっくり暗算し、OKと応えておいた。ちょっとつっけんどんな接客に横浜の中華街を思い出してしまった。中華街は世界中こうなだろう。

HK Diner メニューの一部

さて、メニュー。このメニューでは「焗飯(HK Baked Specials)」の欄に目的の品が載っていた。漢字は前掲した2012年頃のメニューと同じく「葡汁焗猪扒」だが、英語表記は「Portuguese Baked Pork Chop」となっている。なるほど、「葡汁」は葡萄牙=ポルトガル風(Portuguese)の汁=ソースという意味だったのか!

あとで調べたところこれはマカオ料理のひとつで、マカオがポルトガル領だった頃の流れで生まれたそうな。詳しくはWikipediaのマカオ料理のページをどうぞ。実際にどんな品かはもうすぐ分かる。飯(rice)と紹介されているがスパゲティ(spagetti)も選べ、どちらも価格は£11.00≒1760円。後者を指定し、ついでにビールを注文した。

Asahi Beer £3.80

ビールはアサヒビールを選択。小瓶(330ml)で£3.80≒608円。ま、あちこち飲んだけど、ロンドンでは安い方かも。グラスは出されなかったので直接飲む。そういえば欧米人は中瓶や大瓶も直飲みする人が多いよな。味はいつもの飲みなれた味。ビールは赤星派なのだが、海外で飲む分には贅沢を言わないでおこう。

十分あまりでメインディッシュが到着。深めの皿にスパゲティと具材を盛り付け、焦げ目をつけたという外観。とりあえずいただこう。

Portuguese Baked Pork Chop w/ Spagetti £11.00

麺は前述の通り、スパゲティを使っている。アルデンテではなく、割と軟らかめ。炒めたりしてないので厳密には焼きそばではないのだが、前掲した通り2012年当時は焼きそば(Fried Noodles)に分類されていたってことでお許しを。豚バラ肉と玉ねぎをソースに絡めてスパゲティに乗せ、グリルで焼き上げてある。

ココナッツミルクベースの甘めのソース

このソースが不思議な味で、ココナッツミルクをベースにしている。ココナッツの控えめな甘さに、ほのかに紛れるスパイスの香り。スパイスはターメリック主体なのか、香りだけで辛さはない。豚バラ肉は排骨のように衣を塗し、一度油通ししてある。結構たっぷり使われていて、カリッとした焦げ目も旨い。ビールも進む。日本語の料理名をつけるなら「超甘口・焼きポークカレー・スパゲティ」あたりかな。

スパゲティとココナッツミルクの中華料理

マカオの広東料理と領主国のポルトガル料理、さらにその経由地にあるココナッツミルクやスパイスを融合して出来たという、なんとも不思議な品である。しかしなぜ中華麺でなくスパゲティを使っているんだろう。謎だ。まあ意外と美味しかったし面白い体験ができた。満足満足。

量は多からず、少なからず。一人前でちょうど良いボリューム感だった。サイドオーダーも検討してみたが、アイデアが思い浮かばないし、手持ちの現金も心もとなかったのでこれにてお会計。

メニューの価格を足すと£14.80だが、請求額は£16.30≒2608円。手書きの雑な伝票で明細がよく分からないが、恐らく10%のサービス料を加算し、四捨五入してこの金額になるのだろう。とりあえず言われた金額に多少チップを加えて払っておいた。

ちなみに余所の中華料理店の店頭メニューを何軒かチェックしてみたが、「葡汁焗」系の品は全く置いてなかった。ロンドンの中華街でも異端的な料理のようだ。その代わり、ロブスター焼きそばを提供している店はたくさんあった。中華街めぐりをされる方には、そちらもオススメしておこう。


ロンドンの焼きそば特集は以上となります! みなさま、いかがでしたでしょうか? 以前お伝えしたようにロンドンでは他にもいろいろと食べましたけど、あえて焼きそばってのも面白いですよ。もし訪れることがありましたら、思い出してくださいませ。

店舗情報住所: 22 Wardour St, London W1D 6QQ, United Kingdom
TEL: +44 20 7434 9455
営業時間: 11:00~翌04:00
定休日: 無休
ホームページ
主なメニューPortuguese Baked Pork Chop w/ Rice or Spagetti £11.00

Asahi Beer £3.80