福義

2014年3月22日

池袋駅の東口から程近い通りの角に「名代たい焼き」と看板を掲げる店がある。屋号は福義。売りはたい焼きなのだが食事スペースもあって、ラーメンや焼きそばが食べられる。とんねるずのTV番組では「タイヤキ屋なのにラーメンが美味しいお店」として紹介されたそうだ。

池袋東口 福義

訪れたのは6月中旬、雨の土曜日のお昼時。食事スペースの引き戸は摺りガラスで、中の様子は全く見えず。少々入りづらい雰囲気だが気にせずに暖簾を潜る。中はこじんまりしていて、2人掛けのテーブルが7つほど置かれていた。

「いらっしゃいませ」

スタッフは女性のホール担当が1人、厨房に男性2人。先客は無し。空いてる席に腰掛けて手元のメニューを眺める。

福義 メニュー

ラーメン、焼きそば、カレーなど、手軽な品々が手頃な価格で並んでいる。たい焼きはテイクアウトだと150円なのだが、店内で食べると180円と30円ばかり値上がりする。

「ソース焼きそば(500円)、あと、たい焼き(180円)を一つ」
「はい、焼きそばいちー」

厨房から中華鍋で調理する音が聞こえて来た。その間にお姉さんがたい焼きを皿に載せて持ってきた。しまった、食後と言えば良かった。まぁいいや食べてしまえ。

たい焼き 180円

以前、たい焼きには養殖物と天然物があると書いたが、この店はそのハイブリッドというか、独自の機械を使って一匹ずつ自動的に焼いている。型は長年使い込まれて磨り減ってるようで、どこと無く不恰好なたい焼きだ。基本は薄皮のはずなのに餡が偏っててところどころ皮が厚くなってる。そのムラがこの店の妙味なのか、機械焼きらしからぬ味わいでなかなか美味い。

ソース焼きそば 500円

続いてソース焼きそばも登場。麺は中太の角麺でコシがある。具はキャベツにモヤシ、豚肉。青海苔がトッピングされて、脇に紅生姜。味付けはソースだがあっさり薄めで、いかにも昔ながらのソース焼きそばである。特筆すべき点は無いが、野菜のシャキっとした歯応えも良く、無難に美味しい。深みのある皿で意外にボリュームがあった。

刻み葱が浮いた付け合せのスープは、鶏がら醤油か、さっぱりした味わい。確かにラーメンも美味しかろう。後から2人ほど入ってきた客もラーメンやワンタンメンを注文していた。

ところでこの店の創業時期について、WEBでは昭和38年(=1963年)という記載も見かけるが、2012年1月に放映された件の番組で「創業50年以上」と紹介されたようなので、恐らくそれよりは古いだろう。『グルメWalker東京』のサイトには「食堂として開店したが、1957(昭和32年)からたいやきを販売」と紹介されている。また、『東京生活 no.29(2007年11月号)』には「昭和22年創業」とも書かれている。

真相は不明だが、これら雑誌の記述を信用すれば『昭和22年(1947年)に食堂として創業、昭和32年(1957年)からたい焼きを販売』ということになる。「元は食堂、後からたい焼きを販売」というのは、これまで紹介した甘味店とは逆パターンで興味深い。

仮に昭和22年に食堂として創業したなら、「池袋東口連鎖市場」「森田組東口マーケット」などの闇市が賑わっていた頃だろうか。焼け野原の駅前に並ぶバラック小屋、少し歩けば巣鴨プリズン。この店でラーメンや焼きそばを味わいながら、往時の池袋東口を想像するのも一興かも知れない。

福義

店舗情報TEL:03-3983-5606
住所:東京都豊島区東池袋1-9-8
営業時間:11:20~19:00
定休日:月曜日
主なメニューたい焼き 一匹 150円 (店内では180円)
ラーメン 450円
ソース焼そば 500円