大釜本店

2016年6月25日

前回前々回に紹介した千束から少し北東へ移動すると、ドヤ街として知られる山谷(さんや)がある。山谷は台東区・荒川区に跨る簡易宿泊所(ドヤ)が密集する地域の通称だ。最寄のJR南千住駅からは、歩道橋を渡らないと山谷に入れない。物理的にも外部と断絶した地域なのである。ちなみに隣接する「吉原」と同様、「山谷」という地名は現存しない。

この山谷に店を構えるのが大釜(だいかま)本店という甘味処。甘味の他、ラーメンや焼きそばも置いていて、その焼きそばが人気らしい。ということで横浜の寿町に続く「日本三大ドヤ街」の焼きそば第二弾である。

山谷の北 泪橋交差点

頃は今年の3月下旬、とある平日のお昼時。あしたのジョーで有名な泪橋交差点から300mほど南下して、東浅草二丁目交差点でアサヒ商店街へと左折する。都道沿いはごくごく普通の下町と言った感じだったが、横道に入るとドヤ街独特の空気が濃厚になった。それでも寿町に比べれば和やかな雰囲気だ。

平日のお昼時で、昼飯を買出す年配のドヤ住人がウロウロしていた。歩きながら缶チューハイを飲んでる者も多い。また春休みの時期だったため地元の子供たちも多く見かけた。

山谷 甘味処 大釜本店

東浅草二丁目交差点から200mほど東へ歩いて大釜本店に到着。ぱっと見は食堂だが、外向きにお稲荷さんやおはぎを売っている辺りは甘味処ぽい。「らーめん・やきそば」と染め抜かれた暖簾を潜って店内へ。近年改築したらしく、とても綺麗な店舗だ。客席はカウンターが8席にテーブルが5卓。先客はカウンターに一人。

「いらっしゃいませー」

ホール担当の明るい感じの女性が迎えてくれた。厨房にはやや年配のご夫婦。テーブルのひとつに腰掛けてカウンター上部のメニューを確認。

大釜本店 メニューの一部

焼きそばは450円で玉子入りが550円。大盛りは100円増し。あとはラーメンの類に甘味といった構成だ。

「お決まりですか?」
「焼きそば、玉子入り(550円)を」
「はい、『上そば』一丁ーっ!」

厨房から、ご主人が鉄板で調理する音が聞こえてくる。ホールの女性はカウンターの常連となにやら談笑していた。女性の息子の少年もやってきて楽しそうだ。

「お待たせしました、焼きそば玉子入りとスープです」

14時までは焼きそばにスープも付くのか。これはありがたい。

玉子入焼そば 550円

玉子は千駄木の花乃家と同じく、わざと黄身を崩して焼きそばを乗せ、全体をひっくり返す焼き方のようだ。オムそばや目玉焼き乗せに比べると少々見栄えは悪くなるが、この方が麺に馴染んで私は好みである。トッピングに青海苔。紅生姜は卓上に置かれた容器から自分で乗せた。

麺はしなやかな太麺で柔らかいのにコシがある。具はキャベツとモヤシ、そして僅かな挽肉と揚げ玉。よく火が入れられて、しっとりクタクタした仕上がり具合だ。味付けはソースであっさり目。出汁を利かせてあるのか旨味がある。歴史を感じさせるとても美味しい焼きそばだ。玉子の焼き方だけでなく特徴的な麺もどことなく花乃家に似ているが関連性があるのか気になる。

サービスのスープはお椀入りで、色は透んでいる。干し椎茸の出汁なのか、中華とも和風とも感じる不思議な風味だ。具はなく、刻み葱が浮いただけのシンプルさだが、こちらも素直に美味い。

食後は都道まで戻ってカフェ・バッハで一服した。ちなみに大釜本店の隣にあるカレーの店・ニューダイカマは大釜の弟さんの店らしい。アド街ック天国でも取り上げられた山谷の名物店なので、興味のある向きはそちらへもどうぞ。

大釜 本店

店舗情報TEL:03-3872-0103
住所:東京都台東区清川1-29-5
営業時間: 11:30~18:00
定休日: 木曜
主なメニュー焼そば 450円 大盛り 550円
玉子入り焼そば 550円 大盛り650円
ラーメン 500円 大盛り 600円
モヤシラーメン 550円 タンメン 650円
ワンタン 500円 みそラーメン 600円
田舎しるこ 450円 ところ天 350円