ビンタン・バリ

同じ店の同じメニューが短期間で全く別物になる、そんな体験をしたことはあるだろうか?

大久保にあるインドネシア料理店、ビンタン・バリを初めて訪れたのは今年の5月下旬のことだった。場所はJR大久保駅北口を出て大久保通りを渡ったすぐ左。雑居ビルの3階にある。

大久保 ビンタン・バリ(初回訪問時)

中が見えないドアでちょっと入りにくい雰囲気だったが、躊躇せずに入店。前回紹介した高円寺のカフェ・バリチャンプルと同じく、ランチで注文したミーゴレンは屋号の通りのバリ式だった。(あとで思い出せるよう、この見た目を覚えておくように!)

初回訪問時はバリ式のミーゴレンだった

鶏肉やかき玉子・野菜と中太麺を炒め、ケチャップアシン(薄口醤油)であっさり中華風に味付けされ、目玉焼きをトッピングした、日本人がイメージした通りのミーゴレンである。

初回訪問時のランチメニュー

これがランチで500円、生ビールは驚きの150円。自販機のペットボトル並みだ。あまりに安いので、メシコレ仲間のぼさのばさんをお誘いして、6月上旬に同店を再訪。しかし10日ほど前に来た時とどうも様子が違う。

大久保 インドネシア料理 ビンタン・バリ

まず入り口の看板が立派になっている。初回訪問時の写真と見比べて間違い探しをしてしまいそうだ。レギュラーメニューの品揃えも違うし、良く見たら厨房もホール係もスタッフが完全に入れ替わっていた。なにより生ビールが350円に値上がりしているではないか!

かなりがっかりして食事はそこそこで切り上げることに。念のため会計時に事情を訊いてみた。

「こちらの店、以前とメニュー変わりました?」
「あ、はい。最近ジャカルタ出身のオーナーになったんです」
「え、じゃあ料理もバリではなくジャカルタ風に?」
「はい」
「店名はバリのままなのね」
「いろいろお金掛かっちゃうんで……」
「へー、どうもありがとう、また来ます、テレマカシー」
「サマサマー(どういたしまして)」

なるほどな。屋号を変えると広告とか登記とか面倒だもんなあ。いやいや、そうじゃなくて! なにより気になるのはジャカルタスタイルの料理だ。生ビールの値段よりもそっちの方がずっと気になる。

マレーシア・シンガポール・インドネシアの位置関係

前回、カフェ・バリチャンプルの記事冒頭で述べたように、インドネシアのミーゴレンはバリ式とジャワ式で大きく異なる。バリ島は日本人に人気の観光地ということもあり、東京でもバリ料理を食べられる店は結構見つかる。しかし首都ジャカルタのあるジャワ島の料理を出す店は、探してもなかなか見つからなかった。それがまさかバリの名前を関する店で食べられるとは。ミーゴレンもきっとジャワ式に違いない。

ビンタン・バリ 店内の様子

そんなわけで7月上旬、日曜のランチタイムにジャワ式(ジャカルタ式)ミーゴレン目当てでビンタン・バリを3度目の訪問。客席の配置は以前のまま変わらず。6人掛けと4人掛けのテーブルが1卓ずつ。窓際の仕切られたスペースに2人掛けテーブルが5つ。大きなテーブルの方は埋まっていたので、窓際の2人掛けテーブルに着席した。

ビンタン・バリ 麺類メニュー

メニューはランチもディナーも同じらしい。インドネシア風焼きそば=mie gorengが750円。それとインドネシアのビール=ビンタンビール(500円)を注文した。ちなみに生ビールはアサヒスーパードライで前述の通り350円。以前が異常に安かっただけで、この価格帯も全然高くはない。

すぐに出されたビンタンビール(Bintang Beer)。グラスを出されたが瓶で飲むからと断った。ビンタン(Bintang)はインドネシア語で「星」を意味するそうで、ビンタン島という島もあるが、それとは綴りが違うらしい。こちらの屋号のビンタン・バリも「星」の方だ。

ビンタンビール 500円

ラベルに印刷されたトレードマークの赤い星が名前の理由。いわばインドネシアの「赤星」である。味わいはかなりライトで飲みやすく、後味すっきり。ちなみに調理をする女性はヒジャブを被っているのでムスリムなのだろうけど、アルコール類は他にもいろいろと置いてあった。

ミーゴレン 750円

そしてジャワ式(ジャカルタ式)のミーゴレン。写真を見比べれば一目瞭然だが、初回訪問時に出されたものとは見た目が全く違う。10日ほどの間に同じ店の同じメニューでこれだけ違う品を出されたら、事情を知らない客としては混乱しちゃうよなあ。

バリ式とは全く異なるジャワ式ミーゴレン

麺だけは以前と同じだろうか、中太の縮れ麺だ。具はエビ、鶏肉、玉子、ニラ、人参、玉ねぎ、モヤシ。玉子は混ぜ炒めてあるのみで、目玉焼きのトッピングは無し。揚げたエビせん=クルプック・ウダン(Kerupuk udang)や生野菜も付いてこない。

ジャワ式ミーゴレンは味わいこってり

そして一番の違いは味付けだ。ケチャップマニス(kecap manis)=甘口の濃口醤油で甘辛く、こってり味に仕上げてある。マレーチャンで食べたマレーシアのミーゴレンと似た濃厚な味わいだ。あまりの味の濃さについつい、ご飯が欲しくなる。色からするとシンガポールのミーゴレンと同じくトマトソースも使っているかも知れない。

サンバル・トゥラシを混ぜると一層旨い

あとから発酵エビペースト=サンバル・トゥラシ(Sambal terasi)も別の小皿で出してくれた。少量を混ぜると辛さとコクがググッと増す。カフェ・バリチャンプルで食べたバリ式ミーゴレンとは全く別物だが、こっちはこっちで美味しいなあ。

ジャワティー 250円

食後にジャワティー(250円)を注文。もしかしたら大塚食品のジャワティ・ストレートが出てくるのかなと思ったが、パックや茶葉など3種類のお茶から選ぶようだ。選んだのはジャスミン茶。温かい茶器から立ち上る華やかな香りと苦みを楽しんだ。

サイドメニューにはインドネシアの川魚料理としてテラピアとかナマズとかも載っている。ドリンクにはタマリンドジュースもある。屋号はバリなのに料理はジャカルタ。生ビールの値上がりは残念だが、なかなか面白い店だ。また利用させてもらおうっと。

ビンタン・バリ

店舗情報TEL: 03-6886-4439
住所: 東京都新宿区百人町2-27-3 橋本ビル3F
営業時間: 11:00~15:00 17:00~22:00
定休日: 月曜
主なメニューミーゴレン ランチ 750円

ナシゴレン ランチ 750円
ジャワ ティー 250円
アサヒスーパードライ生 350円